イノベーションの風を読む

2018年4月16日

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川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

自動車産業のゲームが変わる

 一世紀以上にわたり、自動車メーカーは巨大なサプライチェーンのピラミッドの頂点に君臨してきた。これまでは、自動車メーカーどうしの戦いであったが、電気自動車(EV)や自律走行車(AV)の登場によって、そのゲームが大きく変わりつつある。

 EV化が進めば自動車の部品点数は激減し、サプライチェーンは徐々に崩壊する。そして、2020年以降に計画されている完全に無人(Level 5)の自律走行車が、現在の自動車の所有形態を大きく変えることになるだろう。自動車は購入して所有するものではなく、シェアしたり、必要なときに必要な場所で利用する、新しいモビリティ(移動手段)になって行く。

 そのようなサービスは、誰が、どのようなビジネスモデルで提供するのか。メンテナンスや保険や駐車場や充電設備などの、自動車に直接関係あることだけでなく、自動車による移動の行動追跡や、車内での時間の過ごし方などに関係する新しいビジネスが生まれ、古いビジネスモデルに基づいた産業は呑み込まれていく。

 それらのアイデアの多くは、スタートアップによって発見されるはずだ。不確実な未来への挑戦の成否は、タイミングや運に大きく左右される。スタートアップは、それを数の力で乗り越える。

 自動車メーカーは、周辺サービスの分野でも、スタートアップとの連携に積極的に取り組んでいる。それらの経営層が、強い危機感を抱いていることがうかがえる。

 ダイムラーは、タクシーの配車サービスのブラックレーンとヘイローに大規模な資金を提供し、フライトカー(空港カーシェアリング)、タクシービート(タクシー配車アプリ)、フリンク(ライドシェア)を買収し、グローブシェルパ(モバイル決済と発券)を合併した。他にもカーリーム、ビア、トゥーロ、マイタクシーなどのライドシェアやカーシェア、さらにスターシップ(自律配送ロボット)やマターネット(ドローン)といったスタートアップにも出資している。

 BMWは、バスドットコム(オンデマンドのバス)、シフト(電子商取引)、フェアードットコム(中古車の無期限リース)、スクープ(相乗り)、ライドセル(ライドシェア)、ドローバー(カーシェア)、カロビ(メンテナンス予約)など、多様なスタートアップに投資している。

 GMは、サイドカー(ライドシェア)の資産を買収して、2016年にMavenというカーシェアリングのサービスを開始した。同時期に、リフト(ライドシェア)に巨額の出資をして戦略的な提携関係を結んでいる。また、スタートアップのコミュニティで存在感を発揮する、マイクロVC(小さな資金を提供するベンチャー・キャピタル)の500スタートアップスを利用して、早い段階のスタートアップを発掘する取り組みも行っている。

 トヨタも、EV/AVのコア技術以外の分野で、ゲットアラウンド(カーシェア)、インテュイション・ロボティクス(コンパニオンロボット)、カーティベーター(空飛ぶ飛行機)、マース・グローバル(マルチモビリティーサービス)、グラブ(配車サービス)などのスタートアップに投資を行っている。

 ダイムラー以外の3社は、それぞれ、BMW iベンチャーズ、GMベンチャーズ、トヨタAIベンチャーズという、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)と呼ばれる、独立したベンチャー投資会社を設立しており、本体と連携して投資活動を行っている。

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