イノベーションの風を読む

2018年4月16日

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川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

エコシステムに貢献する

 あらゆるところで、あらゆるものが、ものすごい勢いで、ソフトウェアに呑み込まれようとしている。ウーバーやエアビーアンドビーのような破壊者は、何もないところから突然現れる。スタートアップは、自社の事業にとって脅威であると同時に、イノベーションを可能にするものになるかもしれない。すべての企業は、スタートアップの世界で何が起きているか、起きようとしているかに注意を払うべきだ。

 フィナンシャル・タイムズの元レポーターで、シリコンバレーウォッチャーとして知られるトム・フォレムスキーは、ZDNetで次のように語っている。

 「シリコンバレーは、大企業のリサーチラボやイノベーションラボと呼ばれるサイトが集まる場所でもある。しかし、偶然でもない限り、これらのサイトからリサーチやイノベーションの成果が生まれることはないだろう。そこは大企業が大切な顧客をもてなしたり、自社のエンジニアへの特典として3カ月の滞在を提供したりする場なのだ。開発のためではなく、見せるための場所にすぎない」

 企業は、もはや自社のR&Dに頼るだけでは、「ソフトウェアが世界を呑み込んでいる」スピードに追従する、あるいは先行することは不可能だ。スタートアップの力を積極的に利用する必要がある。しかし、シリコンバレーにオフィスを置くだけでは何も起きない。

 BMWやGMやトヨタのCVCは、通常のベンチャーキャピタルのように財務的なリターンを目的としているのではなく、スタートアップの世界で起きていることを知るための活動であり、業務提携や買収につながるような関係性を生み出す戦略的な役割を担っている。

 シリコンバレーには、起業家とベンチャーキャピタリストのコミュニティがあり、世界中から集まった起業家によるスタートアップが、生き残り、成長し、エグジットすることを目指している。そのためのエコシステムが形成されており、成功した起業家は次に続くスタートアップを支援し、運悪く生き残ることに失敗したスタートアップの起業家にも再挑戦のチャンスが与えられる。

 スタートアップに出資して育成すること、提携すること、買収することによってエコシステムに貢献し、そのプロセスを通して、今後起こり得るディスラプションを予測する。日本企業がソフトウェア化の波に乗るためには、R&D部門やM&A部門と連携した、ビジネスアジリティ(機動性)のあるCVCが必須だろう。

* スタートアップへの投資やM&Aの情報は、CBインサイトの以下のレポートによる。
https://www.cbinsights.com/research/top-acquirers-ai-startups-ma-timeline/
https://www.cbinsights.com/research/auto-oems-startup-investment-expert-intelligence/

  
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