ちょいとお江戸の読み解き散歩 「ひととき」より

2018年6月5日

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牧野健太郎(読み解き) (まきの けんたろう)

ボストン美術館と共同制作した浮世絵デジタル化プロジェクト(特別協賛/第一興商)の日本側責任者。公益社団法人日本ユネスコ協会連盟評議委員・NHKプロモーション プロデューサー。浅草「アミューズミュージアム」にてお江戸にタイムスリップするような「浮世絵ナイト」が好評。

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近藤俊子(構成/文) (こんどう としこ)

編集者。元婦人画報社にて男性ファッション誌『メンズクラブ』、女性誌『婦人画報』の編集に携わる。現在は、雑誌、単行本、PRリリースなどにおいて、主にライフスタイル、カルチャーの分野に関わる。

[執筆記事]

 5月の空の鯉のぼり、「口先ばかりではらわたはなし」。お江戸の立派な鯉のぼりが空を泳いでいます。それにしても、この鯉のぼりは何故こんなに大きく描かれているのでしょうか。

歌川広重「名所江戸百景 水道橋駿河台」
Photograph © 2018 Museum of Fine Arts, Boston. All Rights reserved. William S. and John T. Spaulding Collection, 1921 21_9474

「江戸っ子心」をのぞいてみれば

上左(⑧)、上右(①)、下(②)

 お江戸の鯉のぼりは「真鯉」だけ。緋鯉のお母さんや子供たちが登場するのは、ずっと後の世のことで、当時は1匹だけの鯉のぼりでした。歌川広重さんの「名所江戸百景 水道橋駿河台(すいどうばしするがだい)」は安政4年(1857)の作
品です(①、⑧)。

 今の総武線・中央線の水道橋駅付近を本郷の順天堂大学側から描いています。鯉のぼりの尻尾の右、緑の土手に松の木が並んでいるあたりが水道橋駅です(②)。その下の神田川にかかる木製の水道橋の右、画面の外側には広大な水戸藩の御屋敷が広がっていました。今では巨人軍の本拠地、東京ドームや小石川後楽園のある界隈です。

 水道橋を、馬に乗って槍持ちを連れたお武家さんが渡っています。神田川の土手道を行く町人たちは、傘や笠で夏の日差しを避けているのでしょう。見事な赤い冑(かぶと)を持った人まで見えます(③)。節句の飾りに冑を修繕に出したのでしょうか、のどかな光景です。

 背びれの下に描かれた建物は、お城の田安(たやす)御門(④)。今は北の丸公園への入口、東京オリンピック・パラリンピックで柔道などの会場となる日本武道館へ通じる門です。

左(③)、右(④)
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