海野素央の Love Trumps Hate

2018年4月16日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

野党民主党の選挙戦略

 2010年の中間選挙でバラク・オバマ大統領(当時)は、上院で6議席、下院で63議席を失いました。オバマ大統領の医療保険制度改革(通称オバマケア)に猛反発した保守派の市民運動「ティーパーティー(茶会)」が全国的な反オバマの運動を起こしたのです。その結果、オバマ大統領は歴史的な大敗を喫することになりました。過去6回の中間選挙において、現職大統領が4回負けており、下院では平均で40議席を失っています。

 今回の中間選挙では、野党民主党の勢いや熱意が与党共和党のそれらを上回るでしょう。ロイター通信とグローバル調査会社イプソスの共同世論調査(4月6-10日実施)によりますと、「もし今日中間選挙が行われたら、あなたは民主・共和のどちらの党の候補に投票をしますか」という質問に対して、登録した有権者の44%が民主党、34%が共和党と回答し、民主党が10ポイントもリードしています。

 民主党は、銃規制に立ち上がた高校生の運動及び女性を中心とした性暴力反対運動「#MeToo」によって反トランプの大きなうねりを作り、それを票に結びつけることができれば議席増が期待できます。さらに、民主党は3月13日に行われた東部ペンシルベニア州第18選挙区での下院補欠選挙並びに昨年12月12日に実施された南部アラバマ州での上院補欠選挙での勝利により、中間選挙の対策がみえてきました。これはかなり大きな収穫です。以下で収穫の内容を説明しましょう。

 ペンシルベニア州第18選挙区は、前回の大統領選挙でトランプ大統領がクリントン候補を20ポイント差で破った選挙区でした。民主党のコーナー・ラム候補は、共和党の大型減税に反対したものの、トランプ氏に対する個人攻撃を避けました。

 しかもラム候補は、銃規制並びに人工妊娠中絶に反対の立場をとり、身内のナンシー・ペロシ院内総務のリーダーシップを非難したのです。投票日直前に現地に乗り込んだトランプ大統領は、「ラム候補は共和党候補のように振舞っている」と苛立ちを隠せませんでした。

 ラム候補の選挙戦略は、ビル・クリントン元大統領がとった戦略と類似しています。当時民主党は、共和党から保護貿易の擁護者で犯罪に弱い政党とレッテルを貼られていました。

 そこでクリントン大統領は、1994年北米自由貿易協定(NAFTA)に調印しました。さらに同年、連邦三振法(スリーストライク法)を制定し、「犯罪者が3度目の有罪判決を受けた場合、犯した犯罪の種類に関係なく自動的に終身刑になる」という厳しい政策をとったのです。これらの政策により、共和党は貿易と犯罪で民主党に対するアドバンテージを失いました。ラム候補も同様に、ライバルのリック・サッコーン候補のアドバンテージが消える戦略をとったわけです。

 共和党の地盤である南部アラバマ州で行われた上院補欠選挙において、共和党のロイ・ムーア候補を破った民主党のダグ・ジョーンズ候補の選挙戦略もみてみましょう。この補欠選挙ではムーア氏の未成年者に対する猥褻疑惑が浮上し、連日報道されました。確かにこの点では特殊な選挙でしたが、ジョーンズ氏の選挙戦略は注目に値します。

 ジョーンズ氏は、女性、アフリカ系、若者の票を組み合わせた従来の「異文化連合軍」に、無党派はもちろん、トランプ大統領に不満がある共和党穏健派の票までも含めた新型の異文化連合軍で勝利を収めたからです。ラム・ジョーンズ両氏の選挙戦略は、特に共和党の地盤で戦う民主党上院・下院の候補に希望を与えたことは間違いありません。

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