栖来ひかりが綴る「日本人に伝えたい台湾のリアル」

2018年4月16日

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栖来ひかり (すみき・ひかり)

台湾在住ライター

京都市立芸術大学美術学部卒。2006年より台湾在住。日本の各媒体に台湾事情を寄稿している。著書に『在台灣尋找Y字路/台湾、Y字路さがし』(2017年、玉山社)、『山口,西京都的古城之美』(2018年、幸福文化)、『台湾と山口をつなぐ旅』(2018年、西日本出版社)がある。 個人ブログ:『台北歳時記~taipei story』

「相撲の女人禁制」はいっそのことルールにしてしまえばよい

 ものごとには長短があり、日本に帰った時に素晴らしいと感じる文化や伝統の後ろに、それを支えてきた「美徳」「謙虚さ」と呼ばれる暗黙の了解や仕組みが存在することは承知しているし、それをすべて否定したい訳ではない。また、台湾の在り方を全面的に礼賛する気もない。

 しかし「こうあるべき」を取り払って思考を巡らせれば、最近とみに話題となっている相撲の女人禁制問題についても、見えてくることがある。「相撲は神事であり、女人禁制は伝統」という根拠についてだが、相撲が初めて史書に登場するのは采女による「女相撲」であったという研究*もあり、古来からの伝統だと思いこまれてきた「女性禁制」が、たかだか100年ちょっとの歴史しか無い事も明らかになっている。

*参考:http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/933/1/59-1-zinbun-06.pdf

 そうした歴史認識を踏まえ、神事だ伝統だというのはやめて、いっそのこと「現在の相撲とは、つまり明治期以降に女性を排除することで権威付けを狙ったゲームスポーツなのです」と開き直ればどうだろう。

 ならば、女性が救助のために土俵に上がる事もゲームにおける緊急事態という例外だから、「伝統だから土俵から降りろ」なんて放送してしまう思考停止は起こらないし、宝塚市長が土俵に上がりたいというのも「一応、女性は上がれないというルールのゲームですので」という事で処理できる。女性相撲リーグを設立するかどうかは、それから議論すればいい。

iStock.com/c11yg

日本人女性が今も履き続けている「目に見えない纏足」

 「そういうもの」「伝統だから」といった思い込みという名の目に見えない「纏足」を、日本人女性は今も履き続けている。そのことの評価はさておき、ここで思考停止することが女性の社会進出を大きく阻んでいるのは、数値が示している通りだ。実際に台湾も昔からこうだったわけではなく、合理性に対して前向きに取り組んで来た結果として、現在の姿があるといえそうだ。

 台湾に渡った乃木大将の御母堂は、結局マラリアを患ってわずか二か月後に亡くなったが、自分が助けに行こうと思った台湾女性に対して大きく立ち遅れている日本の現状を、草葉の陰でどう感じていることだろう。

■修正履歴:1頁目の「大統領」は正しくは「総統」でした。訂正してお詫びいたします。該当箇所は修正済みです。(編集部 2018/4/16 16:10)

栖来ひかり(台湾在住ライター)
京都市立芸術大学美術学部卒。2006年より台湾在住。日本の各媒体に台湾事情を寄稿している。著書に『在台灣尋找Y字路/台湾、Y字路さがし』(2017年、玉山社)、『山口,西京都的古城之美』(2018年、幸福文化)がある。 個人ブログ:『台北歳時記~taipei story』


  
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