ヒットメーカーの舞台裏

2011年3月1日

»著者プロフィール
著者
閉じる

池原照雄 (いけはら・てるお)

ジャーナリスト

1950年生まれ。専門紙や全国紙の経済記者として自動車、エネルギー、金融、官庁などを担当。00年からフリーになり幅広い執筆、講演活動を展開。著書に「トヨタVSホンダ」(日刊工業新聞社)、「図解雑学 自動車業界のしくみ」(ナツメ社)など。

 カシオが2010年11月に発売した最新のコンパクトデジタルカメラで、1秒間に40コマの撮影ができる高速連写など高機能を満載している。なかでも、撮影した写真を独特な絵画のように処理できる「アート機能」が人気の的だ。実勢価格は約4万円と、2万円台が主流のコンパクトデジカメでは数少ないハイエンド機種だが、発売後の売れ行きは常時ベスト20以内にランクされている。

カシオ計算機「EXILIM EX-ZR10」

 アート機能で撮った写真は、写真でありながら、そうとは思えない不思議な違和感が迫ってくる。通常の撮影だと暗くぼんやりしているはずの部分までも明瞭に表現されたり、赤や黄色などが極彩色になっていたりする。こうした写真は、数年前からちょっとしたブームになっており、米国ではインターネット上の写真共有サイトに専門のコーナーも設けられている。通常、このような写真はパソコンで専用ソフトを使い加工する。元となる写真は、同じアングルでカメラの露出を変えながら複数枚撮影する必要がある。同じアングルで撮るためには、三脚でカメラを固定しなければならない。

 カシオの「EX−ZR10」は、そうした手間を省き、カメラを手持ちのまま撮影できるようにした。アート機能の写真は、「HDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)」という機能を使って作り出す。HDRとは、カメラの明るさを再現する能力を高めたもので、夜景や逆光時など撮影が難しい場面でこの機能が使われる。コンパクトデジカメでは最近導入が始まった先端機能である。

HDRアート機能を使って絵画のようになった写真(右)

 その仕組みは、それぞれ露出の異なる写真を瞬時に複数枚撮影したうえで、1枚の写真に合成するというものだ。たとえば、夜景をバックに人物を撮影する場合、露出が大きいと夜景はよく写るが人物の顔は白ける。逆に、顔の撮影に適した露出にすると夜景は充分写らない。

企画担当者のこだわり

 そこで、HDRでは露出をさまざまに設定した写真を高速連写で撮り、そのうち3枚程度の写真のいいとこ取りをして合成する。できた写真は、人間の眼で対象物を見た印象に、より近いものになる。カメラのレンズやセンサーは進化しているが、広いレンジで明るさを再現する能力は人間の眼には及ばない。HDRはそれを補い、より人間の眼に近づける機能でもある。「EX−ZR10」にはこのHDRが搭載されており、それをアート機能にも応用した。複数枚の写真を合成するまではHDRと同じだが、合成の際に局所的に彩度やコントラストの強弱を調整することで、まさにアート的な写真表現ができるようにした。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る