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2018年4月21日

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樋泉克夫 (ひずみ・かつお)

愛知県立大学名誉教授

中央大学法学部、香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士後期課程を経て外務省専門調査員として在タイ日本国大使館勤務。著書に『華僑コネクション』『京劇と中国人』『華僑烈々―大中華圏を動かす覇者たち―』(以上、新潮社刊)など。

[著書]

ウズベキスタンは世界に2カ国しかない「二重内陸国」の1つ

 ウズベキスタンは世界に2カ国しかない「二重内陸国」の1つ。つまり国境を最低2回越えなければ海に達することができないのである。沙漠地下には金、石油、天然ガス、石炭、ウランなどの豊富な地下資源が眠り、豊富なエネルギー資源を狙ってアジアからは中国石油天然気集団(CNPC)、韓国石油公社(KNOC)が進出し、大型投資を行っている。

(FilmColoratStudio/iStock) 写真を拡大

 豊富な地下資源を誇るものの、それらを輸出するには先ずは周辺諸国を通過しなければならない。目下のところ動いている物流ルートは①中国ルート(カザフスタン経由西安)、②ロシア・ルート(シベリア経由ウラジオストック)、③イラン・ルート(トルクメニスタン経由)の3ルートあり、輸送単価が最も安いのがイラン・ルートとのことだ。

 イラン・ルートにしたところで物流を本格化させる前提にインフラ整備という大問題を解決しなければならない。だが、1人当たりのGDPが2122ドル(2016年IMF統計)で世界平均20%程度の経済力では、陸路であれ鉄路であれ自力によるインフラ整備は困難だろう。そこで外資導入になるわけだが、ここでも一帯一路を掲げる中国が「双贏(ウィン・ウィン)関係」を持ち出し、経済協力を持ちかける。

 おそらくミルジエフ政権にしたところで、「双贏関係」を掲げる中国の下心が「双贏」にあるわけはなく、自国本位の一帯一路建設にあることぐらいは見抜いているはずだ。にもかかわらず外資導入先として最も現実的で可能性があるのが中国だとするなら、敢えて“火中の栗”を拾うことも考えられる。だが闇雲に“火中”に手を突っ込むような愚策は採らないだろう。

 ここで古来、シルクロードの幹線ルートだったというウウズベキスタンの歴史的背景、さらにはカザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、アフガニスタン、トルクメニスタンのど真ん中に位置する地政学上の位置を考えるなら、これらの条件を背景に北京と取引をする可能性は大だ。いわば「二重内陸国」というマイナスは条件次第でプラスに転ずることが出来るのだ。

 中国にしてみれば一帯一路完成のためにはウズベキスタン・ルートの確保は断固として譲れない。つまりウズベキスタンを引き込まない限り、「中華文明の偉大な復興」は不完全に終わり、「中国の夢」は白日夢になりかねず、ましてや習近平政権が2期目発足にあたって掲げた「新しい時代の中国の特色ある社会主義」にキズが付きかねない。

 ウズベキスタンを押さえるかどうかは、中央アジア全体の動向を大きく左右するはず。

 であればこそ、ミルジエフ政権は数少ない自国の外交資源を十分に生かして中国との交渉に挑むこととなろう。ミルジエフ政権の対中外交の今後に注目したいものだ。

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