使えない上司・使えない部下

2018年4月25日

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吉田典史 (よしだ・のりふみ)

ジャーナリスト・記者・ライター

ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年から、フリー。
主に、人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。『悶える職場』(光文社)、
震災死』『あの日、「負け組社員」になった…―他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)『封印された震災死』(世界文化社)など。

 昔ながらの律儀な労働者という印象を受けます。彼らがホームレスになった理由は、さまざまです。1つは、会社という組織になじむことができないために辞めてしまい、失業者になるのです。たとえば、上司と何らかのきっかけで衝突し、辞めてしまう。多くの会社員は、そこでぐっとこらえるのでしょうね。それができない。つまり、耐えることを自らに課さない方だともいえるのです。

 こういう方には、ご自身の仕事や経験には強い自信をもっておられる人が多いのです。たとえば、板前さんや工事現場で働く方たちです。その職業に長年にわたり関わってきたから、辛かったことも含めて自負心をもっておられます。これまで自分の腕で生きてきたのだから、今さら、国の世話にはならない…と相談に来られるのです。

人に与えることが幸福なのだ、と
あらためて思い知らされました

 一方で、10年程前から目立つようになった20~30代のホームレスの方はやや状況が異なります。たとえば、地方の小さな工場に正社員として勤務していたのですが、長時間労働などでキツくなり、短い期間で辞めてしまう。その後、上京し、都内の会社に派遣社員として働くが、ここも辞める。また、派遣社員として再就職するものの、雇い止めになる。これを繰り返すと、労働条件がますます悪い職場で働かざるを得なくなる。しだいに働く意欲がなくなり、孤立してしまう。やがてホームレスになり、ここに来た人がいました。

 あるいは、子どもの頃に両親が離婚したことで児童養護施設に入り、高校卒業時に施設を離れ、寮のある工場へ就職するものの、辞めて住居も失いました。その後、就職と退職を繰り返し、路上で生活をするようになり、ビッグイシューに来た人もいます。

 こういう方たちが、面談のときに話されることがあります。「自分が選んできた道ですから、仕方がありません。私に問題があるのです」。そして、自虐的とも言えるほどに自分を追い詰めてしまっているから、人に事情を説明し、助けを求めることをしなくなります。

 実は、誰もが何かのきっかけで、このように孤立することがあるはずです。私は、彼らの中には職場だけでなく、家庭環境も含め、さまざまな事情が重なり、現在の状況になった人がいると見ています。しかし、ほとんどの方が身の不幸を嘆くことも怒ることもしません。「自分を辞めさせた会社を許せない」とか、「あの上司に問題がある」と怒る方はまずいません。中には、横暴な上司の被害者だったのではないかな、と思う人もいます。それでも、言わない。まして、「社会や日本経済に問題がある」なんて言いませんよ…。

 むしろ、大半の方が「自分に非があった」「わがままだったから、会社を辞めた」と答えます。すべてを自分の責任にしていく傾向があるのです。そのことに私は強いショックを受けています。「日本の社会や経済に問題がある」と面談の場で話される方がいたら、私はシンパシーを感じるのかもしれません。いい意味で議論ができますからね。

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