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2018年5月15日

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田中敬文 (たなか・たかふみ)

東京学芸大学教育学部准教授

早稲田大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。専門は公共経済学、特にNPO、教育の経済学。ジョンズ・ホプキンス大学政策研究所研究員、参議院文教科学委員会客員調査員を歴任。

 だが、欧米とは異なり社会人をターゲットとしない日本の大学にとって、減り続ける18歳人口のみが実質的な市場だ。大学を存続させたとしても、その前途が多難であることに変わりはない。また公立化による学費引き下げは、一見すると家計負担の軽減につながるようではある。しかし大学への公費投入は、やがては地域住民の負担増加という形でツケが回ってくる。加えて公費投入は周辺地域の私大の経営努力のモチベーションを失わせる諸刃(もろは)の剣でもある。

18歳人口が減り続けていくことが確定している中、既に4割が定員割れ大学、特に地方の私大の処遇が問題となってくる
(写真・ YAGI-STUDIO/GETTYIMAGES)

 これらを許容し公立化をするに際しても、既存の地方国立大や公立大との住み分けが不可欠だ。16年度以降、86ある国立大は3種類に分別され、そのうち「地域貢献」に分類され地域に根ざすとされている国立大は55に上る。地方の新興私大が実績ある地元の国立大と伍(ご)するのは並大抵ではない。大学がその地域の産業に役立つ学びの場となるようにし、卒業生がその地域で就職できるようにグランドデザインを描いて大学を地域に組み込まなければ、公立化も一時的な延命措置で終わってしまう。

 また目下、政府により「一億総活躍社会」の実現に向けた「リカレント教育」や、「地域創生」のための「産官学の連携」の必要性、さらには「大学のグローバル化」のための「外国人留学生の受け入れ増」が叫ばれているが、これが本来の趣旨から逸脱し、経営難の私大の延命のために公費を投入する言い訳に利用されるようなことがあってはならない。

 大学は時代に応じて参入を認められてきたのならば、「構造不況」である今こそ、時代に応じてその数を減らしていくときである。経営に行き詰まった地方私大に残された道は「撤退」、「他大学との統合」、「学部の切り売り」となる。しかし、統合先にメリットがある有望な私大や価値のある個性的な学部を有している私大は、そもそも経営難に陥るのはもっと後になるはずだ。つまり、すでに経営難に陥っている大半の私大に残された道はもはや「撤退」しかない。

 私立学校法により国は私大に対し直接介入することはできない。そのため国は私大に対し、自分の意思で「名誉ある撤退」を行えるよう政策誘導する必要がある。文科省は1月、「定員割れ」「5年程度の連続赤字」「教育の質が低評価」といった条件に該当した場合に私学助成金を減額する方針を示した。こうした方策は撤退を促すには有効かもしれない。

 また文科省管轄の特殊法人である日本私立学校振興・共済事業団は私大に対し経営指導などを行っている。こうした専門機関が「撤退」に向けアドバイスしていくことも重要だ。

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