WEDGE REPORT

2018年5月15日

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田中敬文 (たなか・たかふみ)

東京学芸大学教育学部准教授

早稲田大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。専門は公共経済学、特にNPO、教育の経済学。ジョンズ・ホプキンス大学政策研究所研究員、参議院文教科学委員会客員調査員を歴任。

数年を要する大学の「撤退」
求められる経営の透明化

 というのも、私大の設立に時間と資金が必要であるのと同様、撤退にも手間を要するからだ。学生や教員の処遇だけではなく、特に地方は土地を無償提供されたりするなど自治体との結びつきが強い場合が多く、地元の経済界から援助を受けているケースもある。こうした関係者との調整には多大な時間を要するため、数年前から準備を始めなければならない。時間と準備が足りないと、突発的な破綻という、学生にとって最悪の事態さえ起こりうる。

 私大の突発的な閉鎖が危惧されるようになれば、学生・保護者が自己防衛できるように、国は経営情報の開示をより積極的に求めるべきだろう。20年前と比べると今日の大学の経営情報は開示されつつある。しかし問題は学校法人会計が独特の仕組みや表記のため、学生・保護者がすぐには理解できないことにある。企業会計の専門家でさえ、学校法人会計はわかりにくいという。

 また、定員割れによる収入減を人件費凍結などによりどうにかやりくりしている大学もあるから、経営状況は経常収支の継続的な赤字を一層厳しくチェックすべきである。一方で、大学の他に高校や幼稚園など複数の学校を経営する法人も珍しくなく、大学の赤字を他の黒字で賄うことも可能である点には留意が必要だ。

 いずれにせよ、学生保護の観点から、経営情報の分かりやすい開示を怠っている大学は学生に選ばれないような環境整備が必要である。志願者数や入学者数・在籍学生数の実員という「入口」情報や、学生が身につけた教育成果や地域への貢献といった「出口」情報の開示のない大学にも、撤退を促すことも考えるべきであろう。

 「2018年問題」は以前から予測できた問題でありながら、18年に突入した現在にあっても具体的な政策を施行できていない現状は遅すぎると言わざるを得ない。私大の突発的な破綻により路頭に迷う学生が出ないよう、私大の「名誉ある撤退」に向けた施策が急がれる。

  
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◆Wedge2018年3月号より

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