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2018年4月28日

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マイケル・マッデン 米ジョンズ・ホプキンス大学・米韓研究所

27日の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と文在寅(ムン・ジェイン)大統領の会談は、南北首脳会談としては3回目になる。

朝鮮半島の非核化への決意を表明した歴史的な首脳会談は、金委員長がどんな人物なのかを世界の人々が直接垣間見ることができた初めての機会だった。

そのため、当然かもしれないが、いくつかの象徴的かつ異例な場面があった。

1. なぜ2人は韓国側で会談したのか

北朝鮮は、板門店の韓国側で彼らの最高指導者が文大統領と会うことに同意した。これは、2000年に平壌で開かれた首脳会談で韓国の故・金大中大統領が故・金正日氏に語った言葉を思い出させる。

北朝鮮の最高指導者だった金正日氏より17歳年上の金大中氏は、本来は年少者が年長者を訪れるべきだと指摘し、金正日氏が韓国を訪問するのが返礼としてふさわしいと語った。

金正日氏が韓国を訪れることはなかった。そのため、1951年以来初めて韓国を訪れた北朝鮮指導者となった金正恩氏は、一定の敬意を示して、過去の首脳会談とは違うというところを、この点でも見せたかったのかもしれない。

27日の首脳会談は、文大統領が軍事境界線(MDL)で金委員長を出迎え始まった。文大統領が金委員長に、自分が北朝鮮を訪問できるのはいつだろうかと訪ねると、想定外のことが起きた。

金委員長は「じゃあ今しますか」と文大統領の手を取り、南北の境界を示すコンクリートブロックを一緒にまたぐよう促し、ユーモアのセンスと向こう見ずな性格を見せた。

2人は手を取り合って境界線をまたいだ。

首脳会談での金委員長の言動は、彼の主導的立場を印象付けようとするものだった。

一方で、文大統領に対しては敬意を表し、朝鮮半島の平和を目指し、現在のところは挑発的な行為を控えるという意思が真摯なものだということを示した。

また、南北間で急に活発になったやり取りは、2000年代のものとは違って、より控え目な経済的、社会的な協力を目指している。

2. 除菌スプレーと力の誇示

北朝鮮の最高指導者には多くの特権があるが、その一つが大勢の護衛だ。

金委員長の護衛司令部と、身辺の護衛担当者たちは、会談に使われるすべての部屋を事前に調べ、盗聴器や爆発物がないか確認した。

金委員長が座る椅子や触るものには殺菌剤スプレーが使われた。

会談開始後1時間40分で、昼食のための休憩をとった際には、金委員長が乗るメルセデス・ベンツ製リムジンを12人の護衛が囲んで走った。過去にない力の誇示だった。

3. 居心地の悪い議題と異例の発言

会談の冒頭、金委員長は文大統領の前でいくつかの厄介な問題に触れた。

金氏は、「故郷を失った人々、脱北者、延坪島の住民」は首脳会談に大きな期待を持っているだろうと語った。

北朝鮮では裏切り者だとされ家族も処罰の対象になる可能性がある脱北者について、金委員長が触れるのは異例だ。

また、韓国の延坪島に触れたのは、2010年に起きた北朝鮮による砲撃が念頭に置かれている。専門家たちは、金正日氏が息子への権限委譲を円滑に進めようとするため、砲撃が実施されたと考えている。

しかし最も興味深いのは、北朝鮮にとって不可欠なインフラの改善が必要になっていると金正恩氏が認めたことだ。

文大統領が、朝鮮半島の人々が神聖視する北朝鮮の山、白頭山に登ってみたいと話すと、金正恩氏は、「貧弱な交通インフラが恥ずかしい」と応じた。

白頭山近くまでの近代的な鉄道の建設が始まってから数年が立つが、金委員長の言葉は、計画が順調に進んでいないことを認めた異例の発言だとみられる。

4. 文化とスポーツ、だが経済ではない

文大統領との最初の会談で、金委員長は妹の金与正(キム・ヨジョン)氏と諜報機関トップだった金英哲(キム・ヨンチョル)氏のみを同席させた。金英哲氏は南北関係の政策を統括している。

2人は金委員長の最側近で、今年2月に韓国の平昌で開かれた冬季オリンピックにも出席した。

会談前と午前の会談で、金委員長の書類を入れたファイルは金与正氏が持っていた。韓国側の出席者は会談で大量のメモを取っていた。

金正恩氏は、首脳会談のさまざまな段階で、ほかの数人の高官を参加させた。

外交政策を担当する高官2人と軍の幹部2人、文化・スポーツ、人道支援を担当する高官らが同行し、金委員長が外交や軍事でのさらなるやり取りと、追加的な文化・スポーツ面での交流に関心があることが明確に示された。

しかし、中国を訪問し習近平国家主席と会談したときとは対照的に、経済の担当者や、国内の治安当局者は同行していなかった。

このことから、今回の首脳会談でのやり取りは大方表面的なもので、経済協力や共同開発プロジェクトなど、より実質的な内容は今後のことなのがうかがわれる。

5. 多くの意味が込められた敬礼

南北の代表が対面したとき、北朝鮮の朴永植(パク・ヨンシク)人民武力相(国防相)や李明秀(リ・ミョンス)軍総参謀長は文大統領に敬礼し、友好的な姿勢の表れとして敬意を示した。

韓国側は金正恩氏に敬礼しなかった。

金正恩氏も、儀仗兵の閲兵式で敬礼を返さなかった。

これらの場面は、1950~53年にかけて戦われた朝鮮戦争が和平協定ではなく、休戦協定で終わっていることを示している。

両首脳は、「平和の新時代」を始めることで合意した。しかし、多くの困難な仕事はこれからだ。

マイケル・マッデン氏は、米ジョンズ・ホプキンス大学・米韓研究所の客員研究者で、北朝鮮分析サイト「38ノース」傘下の北朝鮮指導部をモニターする「ノース・コリア・リーダーシップ・ウォッチ」を運営している。

(英語記事 Koreas summit: Five key moments from the Kim-Moon meeting

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-43932283

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