WEDGE REPORT

必修化直前 小学校英語の「悪影響」を避けるには
大津由紀雄慶應義塾大学教授に聞く

大津由紀雄(おおつ・ゆきお)
慶應義塾大学言語文化研究所・教授。東京言語研究所・運営委員長。日本学術会議連携委員。日本英語学会理事。専門分野は、言語の認知科学(文法獲得、統語解析、理論脳科学)、言語教育、 科学教育など。マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院(言語学・哲学研究科)のノーム・チョムスキーの元で博士号を取得。認知科学における言語理論研究の基礎の構築を目指すとともに、言語教育などにも積極的に発言を行っている。言語教育関係の著書に『探検!ことばの世界』(ひつじ書房)、『ことばのからくり』(岩波書店)、『英語学習7つの誤解』『英文法の疑問』(以上生活人新書)などがある。

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ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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 教育とは、「新しい知識を授けること」と同様に、「既知の知識に気づかせること」も非常に重要です。母語はまさに後者にうってつけの材料。しかも、先述のおじいさんとおばあさんの例のように、母語は直感がききます。故に、小学校でも取り入れられるし、そこで母語を相対化することによって、「ことば」という視点が身につき、中学校から英語を学び始めるのがスムーズになります。そのためにも、小学校では「英語活動」ではなく「ことば活動」を取り入れてほしい。

 必修化に向けた心構えも示しましたが、根本的な議論はまだ終わっていません。小学校英語活動の準備不足を指摘する声が出ているのは当然ですが、「準備が整えばやるべき」とも思えません。「本当に小学校で英語を扱う必要があるのか」という本質の議論をしないまま、事が進めば、犠牲になるのは子どもたちです。私たち大人が、「英語が使えない日本人」、だから「早期英語教育」が必要だ、などの神話を捨て、子どもたちにとって本当に大切なことは何か、もっと考えるべきです。子どもたちには、言語や文化に優劣はないということを身に染みて理解し、相手を思いやる心をもってコミュニケーションを図る、本当の意味での「国際人」になってほしいと、誰しも思うはずです。「ことば」の視点が欠けた英語偏重意識が強くなる恐れのある小学校英語、ひいては日本の英語教育は、それとまったく逆の方向へ向かっている気がしてなりません。今からでも遅くありません。「ことばへの気づき」活動の教材等は、近々ある程度ウェブ上で提供する予定です。小学校英語が、日本の英語教育を見直す良いきっかけになれば良いと思います。


大津由紀雄(おおつ・ゆきお)
慶應義塾大学言語文化研究所・教授。東京言語研究所・運営委員長。日本学術会議連携委員。日本英語学会理事。専門分野は、言語の認知科学(文法獲得、統語解析、理論脳科学)、言語教育、 科学教育など。マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院(言語学・哲学研究科)のノーム・チョムスキーの元で博士号を取得。認知科学における言語理論研究の基礎の構築を目指すとともに、言語教育などにも積極的に発言を行っている。言語教育関係の著書に『探検!ことばの世界』(ひつじ書房)、『ことばのからくり』(岩波書店)、『英語学習7つの誤解』『英文法の疑問』(以上生活人新書)などがある。

 
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