2024年4月24日(水)

ネット炎上のかけらを拾いに

2018年5月3日

女性蔑視があることを認めなければジェンダー系炎上は防げない

 キリンビバレッジの広告担当者が、女性差別主義者かはわからない。同社は5月1日午前中に問題のツイートを削除し、「お客様にご不快な思いをおかけし大変申し訳ございませんでした。深くお詫び申し上げます」とツイートしている。ハフィントンポストの取材に対しては「こうした炎上は予期できていなかった」と回答したという。これは事実なのだろうし、実際担当者たちは、自分たちの視点が女性差別的だとは思っていないのだろう。

 だが、「女性はこういう自虐ネタを好む」もしくは「女性は同性を貶めるネタを好む」という意識があったのだとすれば、それは女性蔑視だ。このプロモーションを批判するコメントの中には「自尊心が高いことや自己愛が強いことの何がいけないのか」という意見もあった。全くその通りだと感じる。なぜ自己卑下を求めるのか。

 中高生に人気のYoutuberなど動画配信者でも、自虐的なモノマネを得意とする人はいる。確かに面白いが、自虐や毒舌は、絶妙なバランスで成り立っており、少しでも踏み外せば「やりすぎ」になる。大企業が下手に手を出してはいけないものだった、まして顧客層に対して、である。

 先に引用した大学院生のスピーチの中で、彼女はこんなことも言った。男尊女卑社会とは、男性が優遇されているとか、優遇されているからずるいとか、そんなレベルの話ではない。男性は尊く、女性は卑しく劣っているという価値観が社会の中にあることが男尊女卑社会。その通りだと思う。ジェンダー格差は144カ国中114位、伝統や根拠があるわけでもないのに土俵には上がれないと言われ、性差別的な広告に抗議すれば「ま~ん(笑)」「まんさん大発狂」と、女性器を意味するネットスラングで嘲笑される社会だ。

 繰り返されるジェンダーにまつわる企業広告の炎上を防ぐためには。恐らく、「バカな女子高生、女子大生、OL」に怒った、あの大学院生の言葉に、企業の担当者は真摯に耳を傾けるべきなのだと思う。
 

  
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