BBC News

2018年5月3日

»著者プロフィール

フェイスブックにおけるデータ不正収集疑惑の渦中にある英政治コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカが2日、破産手続きを申請したと発表した。

ケンブリッジ・アナリティカは、政治に関係する依頼人の代わりに個人情報を不適切な方法で収集したと告発されている。

フェイスブックによると、最大8700万人分の利用者データがクイズアプリによって収集され、ケンブリッジ・アナリティカに渡ったという。

フェイスブックは疑惑に対する調査を継続すると述べた。

同社の広報担当者は「ケンブリッジ・アナリティカの倒産は、何が起こったのかを正確に理解し、このようなことが二度と起こらないようにするという我々の約束と決意を変えるものではない」とした。

「我々は自社による調査を、関連する公的機関と協力して続けていく」

ケンブリッジ・アナリティカにかけられた疑惑

ケンブリッジ・アナリティカは2016年の米大統領選とブレグジット(英国の欧州連合離脱)をめぐる英国民投票の結果に影響を与えるため、数千万人分のフェイスブック利用者の個人データを使用したと告発されている。

英チャンネル4は3月、ケンブリッジ・アナリティカのアレクサンダー・ニックス最高経営責任者(CEO)が、対立候補者の中傷運動やハニートラップなどの不正な戦術で世界中の選挙を捜査してきた同社の手法を例示する隠し撮り動画を放送した。

ケンブリッジ・アナリティカはイタリア、ケニア、ナイジェリアなどの海外諸国で幅広く選挙運動に協力してきた大量の記録を所有している。同社は一切の不正を否定している。

ケンブリッジ・アナリティカが主張する営業停止を決めた理由

ケンブリッジ・アナリティカの広報担当者クラレンス・ミッチェル氏はBBCに対し、同社のウェブサイトに掲載された声明を引用した。

声明は、「過去数カ月間にわたり、ケンブリッジ・アナリティカは多くの根拠なき疑惑の的となってきた。そして、記録を訂正する努力にもかかわらず、当社は業務について、合法のみならず政治領域、商業領域どちらにおいても広く認められているインターネット広告の規格に合っている商行為を中傷されてきた」とした。

「ケンブリッジ・アナリティカは、従業員は倫理的、合法的に振舞ってきたと揺るぎない自信を持っているが(中略)メディア報道の包囲攻撃は事実上全ての顧客と供給業者を離れさせた」

「その結果として、当社は事業運営の継続はもはや不可能だと判断した」

声明はケンブリッジ・アナリティカの親会社SCLエレクションズも破産手続きを開始していることも明らかにした。

これで終わりなのか

英フィナンシャル・タイムズ紙は、ミッチェル氏とは異なるケンブリッジ・アナリティカの元従業員に匿名を条件として話を聞いたと伝えた。元従業員によると、ケンブリッジ・アナリティカ社幹部は同社を「形、あるいは外見を変えて」出現させることを決めているという。

調査報道でこのプライバシーに関わるデータ不正疑惑を最初に暴露した英オブザーバー紙(英ガーディアンの姉妹紙)のジャーナリストは、市民が疑う姿勢を維持することを勧めている。ガーディアン紙およびオブザーバー紙のキャロル・キャドワラダー記者はツイッターに、「忘れてはいけない。SCLとケンブリッジ・アナリティカは偽情報の専門家たちだ。実際に閉鎖するのは何なのか? なぜ?」とツイートした。

https://twitter.com/carolecadwalla/status/991762243632156672

ケンブリッジ・アナリティカの業務を調査する英議会委員会の委員長も、同社とSCLエレクションズ社の動きを疑問視した。

英下院デジタル・文化・メディア・スポーツ特別委員会(DCMS委員会)委員長のデイミアン・コリンズ下院議員は、「彼らはとても真剣な調査に関係しており、この調査は両企業の廃業によって妨げられない」と述べた。

「両企業の廃業が、彼らが何をしたかについて当局が調査する能力を妨害したり、限定あるいは制限したりする言い訳に使われないことが非常に重要だと考える」

https://twitter.com/DamianCollins/status/991757217895534597

ケンブリッジ・アナリティカがこれまでに取ってきた対策

チャンネル4の動画が放送された後、ケンブリッジ・アナリティカのニックスCEOは3月に停職処分を受けた。

ケンブリッジ・アナリティカは4月、クイズアプリ製作者のアレクサンダー・コーガン博士から提供された米国民の記録は、許可を受けた3000万人分だけで、それらが米大統領選において使われることはなかったと述べた。

同社は、社外からの指摘と異なり、同社が全ての情報を消去したと付け加えた。

ケンブリッジ・アナリティカに資金提供してきた人物

ケンブリッジ・アナリティカへの主要な投資家の1人が、米ヘッジファンドを経営する大富豪のロバート・マーサー氏だ。

ガーディアン紙によると、マーサー氏はケンブリッジ・アナリティカの事業に1500万ドルを投資したという。

かつてはコンピューター科学者だったマーサー氏は、米共和党の大物資金提供者でもあり、ドナルド・トランプ氏の選挙陣営への資金援助も支援した。

マーサー氏が政治観について語ったことはなく、今回のデータ不正収集疑惑についてこれまでに公の場で話したこともないと考えられている。

ブレグジットとの関連は

2日の声明発表前、サイバーセキュリティの専門家は英下院DCMS委員会に、データ不正疑惑がブレグジットをめぐる国民投票と関係している証拠を提出した。

クリス・ビッカリー氏は、SCLとケンブリッジ・アナリティカの両者を、カナダのデータ分析会社アグリゲイトIQと関連付けた。フェイスブックはアグリゲイトIQのフェイスブック利用も停止している。

ビッカリー氏は「疑惑の影を越えた」アグリゲイトIQは、英国のEU離脱をめぐる選挙活動の中で、複数の離脱派グループと「いくつかの形式の協働あるいは調整」に加わったとした。

アグリゲイトIQはケンブリッジ・アナリティカやその親会社SCLの一部となったこと、あるいは不正収集されたフェイスブックのデータにアクセスしたことはないと否定している。

離脱派グループ「ボート・リーブ」や「リーブ.EU」の代表者も、あらゆる不正を繰り返し否定している。

しかし、英選挙管理委員会と情報コミッショナー事務局(ICO)はアグリゲイトIQの業務に対して調査を実施する。

ICOはケンブリッジ・アナリティカの廃業についても声明を発表した。

声明によると、「ICOは民事および刑事の調査を継続し、たとえ企業がもはや運営されていないとしても、適切にそして必要に応じて、適切な個人および監督者を突き止めることを努力し続ける」という。

「我々ICOは、市民が保護されていることを確かにするために、我々が持つ会計監査や調査の能力を用いて、後継企業が誕生しないかどうか注意深く監視する」

不祥事が広まった経緯

3月17日: オブザーバー紙と米ニューヨーク・タイムズ紙が、ケンブリッジ・アナリティカの元従業員クリストファー・ワイリー氏の説明として、フェイスブック利用者5000万人分のデータがケンブリッジ・アナリティカによって不適切に収集されたと報道

3月23日:ICOがケンブリッジ・アナリティカのオフィスを捜索するための令状を受け取る

3月27日: ワイリー氏が英下院DCMS委員会に出席

4月4日:フェイスブックがケンブリッジ・アナリティカによって最大8700万人分の利用者データが不適切に共有されたと考えていると発表

4月10日: フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOが米上院の公聴会に出席し疑惑について議員から質問を受ける

4月17日:停職中のケンブリッジ・アナリティカCEO、アレクサンダー・ニックス氏が英下院DCMS委員会への出席を拒否

4月26日: 英下院DCMS委員会が、ザッカーバーグ氏が委員会に出席し質問に回答していないことについて「次に英国を訪れた際、同氏への公式な召喚状」を送ると警告

5月2日: ケンブリッジ・アナリティカが廃業を発表


<解説>後味の悪い結末

ロリー・ケラン=ジョーンズ BBCテクノロジー担当編集委員(カリフォルニアで取材中)

フェイスブックが主催する開発者会議「F8」にケンブリッジ・アナリティカ廃業のニュースが流れたとき、悲しんだ人はわずかだったと言っても間違いではないだろう。

データ不正使用疑惑は、フェイスブックだけでなく、疑惑への対応の結果データへのアクセスを制限された数千の外部開発者にとっても危機だった。

しかし、廃業を祝おうとした彼らに、ケンブリッジ・アナリティカの声明は後味の悪いものとなった。声明は、ケンブリッジ・アナリティカがした業務は合法なだけでなく、インターネット広告の業界で標準的な慣行だったと主張したのだ。

この声明は業界の一部の人々にとって真実味がある。フェイスブックが継続するアプリの審査で、このような慣行の証拠がますます見つかるかもしれない。

ケンブリッジ・アナリティカはなくなるかもしれないが、調査がさらに進めば、個人データの使用や不正使用についての不快な発見がさらにあるかもしれない。


(英語記事 Cambridge Analytica: Facebook data-harvest firm to shut

提供元:https://www.bbc.com/japanese/43985373

関連記事

新着記事

»もっと見る