公立中学が挑む教育改革

2018年5月9日

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多田慎介 (ただ・しんすけ)

ライター

1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイト入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職を経験。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。

「子どもがやりたいことを尊重してあげるのが一番」

 一連のPTA改革を通じ、工藤氏の改革を知ることで、活動に関わる役員の意識も変わっていった。2017年度から1年生保護者を代表する副会長となった上村実代氏もその一人だ。

「息子は、自由で風通しの良い校風をとても気に入っています。新しくできた購買局にも参加し、『僕たちが購買部の運営を任されている』とうれしそうに活動しています。私も1年間いろいろな行事を見てきました。演劇会に触れて役者を目指そうとする子がいたり、起業家の講演を聞いてビジネスに興味を持つ子がいたり。学校という場は、将来に向けてさまざまな可能性を見いだせるところだと改めて思うようになりました」

 しかし一方で、「もしかしたら、この環境に馴染みきれない子もいるのではないか」とも感じる。そこで、少しでも悩んでいる生徒がいないか、子どもたちの何気ない会話にも耳を傾けるようにしている。

 2年生の娘を持ち、同じく副会長を務める菱沼かや氏は、現在の麹町中学校の教育方針を「子どもたちが『自分の人生は自分のものだ』と考えるきっかけを与えてくれている」と評価する。

「大手企業に就職すれば一生面倒を見てもらえる時代もありました。でも今は『自分』がなければ、どこに行っても、何をしても乗り越えていけない時代です。それを工藤校長が繰り返し語ってくれたおかげで、私自身、子どもに『何がしたい?』と問いかけるようになりました。親としては、大きな一歩を踏み出せた感じがしています」

 3年生の娘を持つ副会長の木村由香氏は、上の子にあたる次男が同校へ通っていた2014年度に工藤氏と出会った。実は昨年、高校卒業を控える次男の進路について工藤氏へ相談している。

「親としては大学受験をしてほしいと思っていましたが、本人は小学校の頃から『料理人になりたい』という夢を持っていました。それで、どうしたらよいか工藤校長に相談したんです」

 工藤氏から返ってきた答えは明快だった。「親は最後まで子どもの面倒を見てあげられるわけではない。だから、子どもがやりたいことを尊重してあげるのが一番ですよ」。その言葉で踏ん切りがつき、次男が調理専門学校に進むことを応援するようになった。

「子どもがやりたいと思うことを尊重し、背中を押してあげられたのは、PTA役員として工藤校長と接する時間が長かったからだと思います。これは子どもとの関わりだけでなく、PTA活動にも生かされました。工藤校長から教わった考え方を保護者の皆さんに伝えることが私の役目になっていました」

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