世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年5月17日

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 4月に行われたASEANサミットの議長声明では、昨年11月の議長声明から落とされた南シナ海問題についての「懸念」の文言が復活し、注目された。以下、同議長声明の南シナ海に関する部分の概要を紹介する。

(mihtiander/Meinzahn/strmko/Grape_vein/mihtiander)

 我々は、南シナ海の平和、安定、安全、航行・飛行の自由を維持し促進することの重要性を再確認した。我々は、2002年の「南シナ海に関する行動宣言(DOC)」の完全で効果的な実施の重要性を強調する。我々は、ASEANと中国との間の協力の進展を歓迎するとともに、効果的な行動規範(COC)の早期合意にむけた中身のある議論の公式の開始に勇気づけられた。我々は、緊張、偶発事故のリスク、誤解、誤算を減らし得る、ASEAN加盟国と中国との海軍間ホットラインや「南シナ海における海上衝突回避規範(CUES)」のような、実際的な手段を歓迎する。我々は、南シナ海に関する問題について議論し、埋め立て、その他の地域の信頼を損ね、緊張を高め、平和、安全、安定を損ね得る活動に対する、何か国かの指導者から表明された懸念に留意する。我々は、相互の信頼を高め、自制し、事態をさらに複雑化させるような行動を避け、国連海洋法条約を含む国際法に沿った形で紛争を平和的に解決する必要性を再認識した。我々は、主権を主張する国々、その他のすべての国による、あらゆる活動について、非軍事化と自制の重要性を強調する。

出典:‘CHAIRMAN’S STATEMENT OF THE 32ND ASEAN SUMMIT’    , April 28, 2018
http://asean.org/storage/2018/04/Chairmans-Statement-of-the-32nd-ASEAN-Summit.pdf

 昨年11月の議長声明では、議長国フィリピンの強い対中配慮もあり、2014年以来盛り込まれてきた、南シナ海問題についての「懸念」の文言が削除された。今回の議長声明でそれが復活したのは良いことである。しかし、ASEANの枠組みだけで南シナ海問題に対処するのは困難であると思われる。

 「南シナ海に関する行動宣言(DOC)」は、2002年にASEANと中国との間で合意されたもので、国際法の原則に従い、領有権などの係争を平和的手段で解決すること、その達成に向けて作業を行うことなどを謳っているが、法的拘束力はない。そこで、法的拘束力のある「行動規範(COC)」にすることが求められてきた。上記声明で、COCの早期開始に向けた議論の開始云々とあるのは、昨年8月に中国とASEANの外相会議でCOCの枠組みが承認されたことを指すが、同案には法的拘束力がないとされる。COCと呼ぶに値するかどうか疑問の余地がある。2014年に合意されたCUESも無意味とは言えないが、あくまでも、海軍同士に関するものであり、中国が多用する、海警や武装漁船には適用されない。

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