中東を読み解く

2018年5月10日

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 トランプ大統領によるイラン核合意からの離脱決定(5月8日)はイランの強い反発を呼び、英仏独の米同盟国も離脱に反対であることを表明、米国との溝が深まった。とりわけ世界が注目しているのは今後どうなるのかだが、トランプ氏にはイランの核問題解決の代替案がなく、「戦略なき決断」であることが浮き彫りになった。

イラン核合意離脱を発表するトランプ大統領 (Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

「プランBはない」

 トランプ大統領は核合意を「ひどい、一方的な取引」とあらためて非難。離脱の理由として、合意から15年経過すればイランが自由に核兵器開発をできるようになること、弾道ミサイルの開発規制が全くないこと、レバノンの武装組織ヒズボラやシリアのアサド政権などイランの過激派支援や影響力拡大になんら歯止めを掛けるものではないことーなどを挙げた。

 その上で大統領は「最高レベル」の経済制裁を科すとし、イラン中央銀行との取引の規制、原油の輸入規制など、核合意の前に科せられていた制裁が復活することになった。大統領は今後について「同盟国と一緒に取り組んで、イランの核脅威に対して現実的、包括的、恒久的な解決を成し遂げる」と述べたが、具体的にどうするかの言及はなかった。

 米メディアなどによると、トランプ大統領やその周辺の考えは、イランは米国やイスラエル、サウジアラビアなどに立ち向かう経済力を持っておらず、核兵器製造の動きが米国などに攻撃の口実を与えることを十分知っている、というものだ。だから「米国が合意を破棄しても、イランは新しい交渉に入らざるを得ない」とトランプ氏は楽観的に考えているフシがある。

 だが、裏返せば、それは希望的観測にすぎない。イランが米国の離脱を受けても、核開発に向かわないという保証はない。そこにはイランの核問題をどうやって解決するのかの戦略がない。長期戦略がないのは、温暖化防止の「パリ協定」からの離脱、エルサレムへの米大使館移転などでも同様だ。トランプ氏に離脱を思いとどまるよう働き掛けたジョンソン英外相は「米政権にプランBはない」と述べ、代替案がないことを指摘している。

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