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2018年5月10日

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イランの最高指導者、アリ・ハメネイ師は9日、核合意離脱を発表したドナルド・トランプ米大統領に対して「間違いだ」と警告した。

ハメネイ師はテレビ演説でイラン政府に対し、核合意に署名している英仏独も信用できないし、合意上の義務を今後履行し続けるには、3カ国から「確実な保証」が必要だと述べた。

「あなた方(政府は)この欧州3カ国と核合意を継続したいそうだが、私はこの3カ国を信用していない。合意を結びたいなら、本物の保証を得ることだ。さもなければ、(英仏独も)明日にも米国と同じことをする」とハメネイ師は述べ、欧米指導者の「言葉には何の価値もない」、「今日何かを言っても明日には違うことを言う。恥知らずな者たちだ」と非難した。

包括的共同作業計画(JCPOA)と呼ばれる2015年合意は、オバマ前政権の米国と英仏中ロの国連安全保障理事会常任理事5カ国とドイツが締結した。イランが核計画を制限することと引き換えに、国連と米国、欧州連合(EU)が同国に科していた経済制裁の解除を定めた。

この合意は「腐っている」と非難し離脱を発表したトランプ氏はかねてから、オバマ前政権が締結したこの合意がイランの核計画を期限付きでしか制限しないことや、弾道ミサイル開発を制止しないを批判してきた。さらに合意によって、中東地域全体に「武器と恐怖と抑圧」をもたらすために使われた1000億ドルの臨時収入を、イランに与えてしまったなどと非難してきた。

トランプ氏は9日、ホワイトハウスで記者団に対して、イランが新しい合意交渉に臨むことを期待すると述べながらも、「核開発を開始しないよう、イランには忠告する。極めて強く忠告する。もしそんなことをすれば、重大な影響が出る」と、イランをけん制した。

穏健派で2015年に核合意を締結したイランのハッサン・ロウハニ大統領は、米国の離脱を批判し「イラン原子力機構(AEO)に対して、必要となれば工業水準のウラン濃縮を無制限で再開できるよう待機を命じた」と明らかにする一方で、「もし他の締結国との協力で核合意の目的が達成されるなら、現状を維持する」と合意継続の意向を示した。

欧州の締結国首脳も、いずれも合意継続の姿勢を示している。エマニュエル・マクロン仏大統領は、トランプ氏の決断を「間違い」と呼び、ドイツの放送局に対して「米国大統領の決定を残念に思う。間違いだと思う。だからこそ欧州の私たちは、核合意に残ることにした」と述べた。

ボリス・ジョンソン英外相は英国として合意を離脱するつもりは「まったくない」と言明した。ドイツのアンゲラ・メルケル首相も、「イランが今後も合意義務を履行し続けるよう、そのために私たちに出来ることは何でもする」と述べた。ロシアも「非常に残念だ」と表明し、中国も憂慮を示した。

一方で、中東地域でイランと対抗する立場にあるサウジアラビアとイスラエルは、共にトランプ政権の決定を歓迎した。サウジアラビアのアデル・アル・ジュベイル外相は9日、米CNNに対して、「もしイランが核保有国となるなら、自分たちも同様に保有国となるため出来る限りのことをする」と述べた。

かねてから核合意を声高に批判してきたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「壊滅的」合意からの米国離脱を「全面的に支援する」と歓迎した。

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なぜ米国は離脱したのか

8日の発表の際にトランプ氏は、2015年合意について「ひどい、一方的な取引で、決して決して交わすべきではなかった」と述べた。イランが違反しても検知する方法がなく、違反を防ぐこともできず、中東におけるイランの「不安定化活動」を制限することもないと批判を重ねた。

対するイランは、自国の核開発は完全に平和的なもので、合意履行状況は国際原子力機関(IAEA)が9日にあらためて、イランの義務履行を確認した。履行内容の一部は次の通り――。

  • 濃縮ウラン備蓄量の制限
  • ウラン濃縮に使う遠心分離機の数を制限
  • 兵器級プルトニウムを製造できないよう重水施設を改良

しかし、トランプ氏は核合意が「平穏をもたらさなかった。平和をもたらさなかった。決してそうはならない」と批判し、イランの核開発だけでなく弾道ミサイル開発、ならびに中東全域におけるイランの活動を対象にした「本物で包括的で持続する」合意実現に向けて取り組むと述べた。大統領はさらに、合意締結によって停止した経済制裁を復活すると表明した。

イランは制裁でどうなる

米財務省によると、90~180日後に再開する経済制裁は、イランの石油産業や、イラン政府の米ドル紙幣獲得政策などを対象にする。

イランの通貨「リアル」は、トランプ氏の離脱発表に先駆けて下落。イラン経済への打撃が予想される。

経済制裁下にあった2012年~2016年に、イランの石油生産量は下落した。今回の制裁再開による生産減が新たに予想されるなか、8日の国際原油価格は3年半ぶりの高値をつけた。サウジアラビアは、供給不足を防ぐために対応すると表明した。


<解説> イラン国民の反応――ラナ・ラヒムプール、BBCペルシャ語

ソーシャルメディアでのイラン人の反応は分かれている。米国の合意離脱を支持する人たちは、「#thankyoutrump(トランプありがとう)」のハッシュタグを使っている。

離脱を歓迎するのは、ロウハニ大統領に反対する反米強硬派のほか、自分たちは合意で恩恵を受けなかったと不満を抱く反政府勢力だ。

そのほかに、どっちつかずの人たちがいる。現状変化を期待しつつ、制裁でそれが加速するのか確信が持てない人たちは、がっかりしている様子だ。米国は自分たちをだました、うそをついたと批判し、制裁は政治家ではなく一般市民が標的になると懸念している。


(英語記事 Iran warns Trump: 'You've made a mistake' over nuclear deal

提供元:https://www.bbc.com/japanese/44063923

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