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2018年5月11日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

「平和の雰囲気に陶酔」

 化学賞や物理学賞など自然科学系の賞では、功績が確認された段階で、ようやく受賞が実現するケースが少なくない。

 日本人初のノーベル賞受賞者は知っての通り、湯川秀樹博士。授賞理由の「中間子の存在の予言」は1935年になされたが、物理学賞受賞は、ほかの学者によって実証された1949年まで待たなければならなかった。IPS細胞の開発で2012年に生理学・医学賞を受けた山中伸弥博士の場合も、米医学誌に論文を発表してから6年が経過していた。

 ノーベル賞とは、このようにきびしく、公正なものなのだ。首脳会談に出てくるからといって、どんな約束をするか、それを本当に実行する気があるのか見極めがつかない段階で賞を授けたり、本命候補などと大騒ぎをするのはナンセンスというほかはない。
 
 韓国で5月5日、脱北者たちが北朝鮮非難ビラを散布しようとして警官隊に阻止された。その時、主催者団体は「残忍な処刑や核・ミサイル挑発で世界を脅した金正恩が嘘の平和攻勢に出ると、韓国社会は平和の雰囲気に陶酔してしまった」と主張したという。(5月6日付産経新聞)

 ノーベル平和賞をめぐる今のフィーバーぶりを的確に伝えてあまりあるといえようが、陶酔しているのは韓国社会だけでない。全世界だろう。

 賭けに夢中の人たちには頭を冷やしてもらい、ノルウェーのノーベル委員会には、賢明な判断を期待したい。

  
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