BBC News

2018年5月11日

»著者プロフィール

フランス北東部ストラスブールで、救急医療サービスのオペレーターが腹痛を訴える女性の電話を無視し、この女性が数時間後に死亡していたことが発覚した。政府は調査を開始している。

昨年12月のこの事件は、被害者家族が入手した通話記録を地元メディアが公開して明らかになった。

亡くなったナオミ・ムセンガさんは当時22歳。公営救急医療サービス(SAMU)に激しい腹痛があると電話し、「死にそうだ」と訴えた。

通話記録は3分にわたる。ムセンガさんはとても弱々しい声で、痛みを説明するのもつらい様子で助けを求めている。

これに対してオペレーターは「誰でもいつかは死ぬものだ」と答えた。また、いらいらした口調で「何が起きてるのか話さないなら電話を切る」と言った。

ムセンガさんはこれに「大きな痛みがある」と答えている。

オペレーターはムセンガさんに医師に電話するよう伝え、救急車の代わりに医師を呼ぶ SOSメドゥサンの電話番号を教えた。

ムセンガさんは「助けてください。具合が悪いんです」と繰り返したが、オペレーターは「助けられない。あなたの状態が分からない」と言い、別の番号を繰り返し、「助けられない」と付け加えた。

通話記録には、ムセンガさんの電話について、このオペレーターが同僚と冗談を交わす様子も入っていた。

ムセンガさんは最終的には SOSメドゥサンに電話したものの、5時間待たされ、救急車で病院に運ばれた。

現地紙ル・モンドによると、ムセンガさんは心筋梗塞を起こして集中治療室に運ばれたものの、「出血性ショックによる多臓器不全」で亡くなった。


通話記録が発覚した後、ストラスブール大学病院は、ムセンガさんの電話を取ったオペレーターを一時的に停職処分としたと発表した。

同病院は、初期調査の段階で「良い電話対応とは言えなかった」と判断したと説明した。ストラスブールの検察も捜査を開始している。

アグネス・ブジン社会問題・保健相は8日、ツイッターでこの事件に「強く憤っている」と発言し、社会事業全般監査局(IGS)に調査を要請したことを明らかにした。

また、「ムセンガさんの家族が全面的な支援を受けられるよう保証し(中略)全ての情報を得られるよう約束する」とも述べている。

https://twitter.com/agnesbuzyn/status/993912771715584000

ナオミ・ムセンガさんの姉ルアンジュさんは、ナオミさんが受けた対応はショッキングだと話す。

「彼女は独りで、今にも死にそうだと訴えていた。彼女のシーツは汚れていた。誰もこんな形で死んではいけない」

ルアンジュさんはナオミさんを「明るく、強く、勇気ある人」だと語り、「ナオミは1人の人間として(中略)助けられ、手当てを受ける権利があった。同じことが二度と起きてはいけない」と話した。

#JusticePourNaomi(ナオミに正義を)

https://www.facebook.com/258800148024039/photos/a.258800188024035.1073741825.258800148024039/258800511357336/?type=3&theater

フェイスブックでは、この事件の「真実と正義」を追及するページ「Justice pour Naomi Musenga(ナオミ・ムセンガに正義を)」が設立された。またツイッターではハッシュタグ「#JusticePourNaomi(ナオミに正義を)」が拡散している。SAMUを「怠慢」と「人種差別」などと批判する声もある。

また、救急医療の専門家パトリック・ペロー氏は地元紙ル・パリジャンの取材に対し、この事件は緊急医療サービスが危機に瀕している表れだと話した。

ペロー氏はストラスブールの事件はショッキングだと非難した一方、救急車の出動要請は1988年の800万件から現在は2100万件に増加していると説明。救急への電話件数も3倍に増えていると述べた。

こうした状況で「疲れ果て、ストレスにさらされ燃え尽きてしまい、患者の苦しみから切り離されている」医療従事者がいるという。

SAMUの元職員は、100件の電話のうち本当に急を要するのは10~20件で、その他は酔っ払っているか、不安か、誰かと話したいだけの電話だと話す。「間違いを犯さないか常に怖れています」と話した。

(英語記事 Young mum dies after emergency call mocked

提供元:https://www.bbc.com/japanese/44063838

関連記事

新着記事

»もっと見る