WEDGE REPORT

2018年5月15日

»著者プロフィール
著者
閉じる

堀成美 (ほり・なるみ)

国立国際医療研究センター 感染症対策専門職

神奈川県生まれ。神奈川大学法学部、東京女子医科大学看護短期大学卒業。感染症科外来勤務の後、国立感染症研究所FETP、聖路加国際大学看護学部を経て、2013年より現職。感染症の流行の早期対応、予防啓発に取り組む。

日本の医療にアクセスできる
「医療滞在ビザ」と「留学」

 「医療滞在ビザ」回避の手段の一つが「留学」だ。実際、医療滞在ビザでの来日や治療と比べると、費用も手間も負担が少ない。

 治療を目的とした留学生の数を把握することは困難だ。外国人患者の定義が不明であるし、日本の医療機関には、外国人の患者を集計する義務もない。受診時に外国人かどうかを確認して集計まで行っている医療機関は少数だ。また、このような事例は全体の割合から見てもそれほど多いということではなく、現時点では、日本の医療財政に大きな負荷となっているというほどの規模でもないと思われる。

 しかし、日本の国民皆保険制度は、日本国民や長期在住者が生涯にわたって支払い続ける保険料によって支えられているのであり、短期間しか保険料を支払っていない外国人がフリーライダー的に高額医療を利用するのは公平性という観点で問題がある。

 もっと深刻なのは、周囲に感染する病気を持った人が留学生として入国した場合だ。例えば、勉強とアルバイトでの睡眠不足、低栄養や異文化でのストレスなどから結核を発症し、日本語学校で集団感染となる事例も各地でおきている。麻疹(はしか)や風疹が持ち込まれ地域に拡大するリスクも常にある。これらは留学ビザを取得する際に事前に病気の有無を証明する診断書を提出させ、ワクチンの接種確認などを義務付ければある程度防げることだ。結果として感染拡大を防ぎ、対策・治療にかかる費用も減らすことができる。

(出所)厚生労働省 写真を拡大

 こうした初歩的なことすらできていないというのが日本の現状なのである。専門団体の意見や現場からの声を受けて、結核に関しては、厚生労働省・外務省がアジア6カ国に対して、入国前に健康診断を受けるよう動き始めたところだ。

関連記事

新着記事

»もっと見る