前向きに読み解く経済の裏側

2018年5月14日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 政府が副業を後押しする時代になりました 。厚生労働省が今年1月に従来の方針を変更し、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、モデル就業規則の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、「原則的に副業を認めるべきだ」としたのです。

(kimberrywood/iStock)

 競合他社との副業が問題外であること、企業の持つ情報やノウハウの流出が許されないこと、等は当然ですし、せっかく働き方改革を推進しているのに、副業によって働きすぎるサラリーマンが増えてしまうことがないように各自が気をつけるべきことも当然でしょう。しかし、そうしたことが守れるのであれば、副業を一概に否定することはなさそうです。

 たしかに企業としては、働き盛りの若手社員には副業より自己研鑽に励んでもらいたいでしょうし、油の乗り切った中堅社員には本業に専念してもらいたいでしょう。また、彼らが副業先で気に入られて転職してしまうリスクなども、気になるはずです。

 したがって、政府の方針にもかかわらず、若手や中堅社員の副業はあまり進まないでしょう。規則上はともかく、副業すれば会社に睨まれると知っても副業をするサラリーマンは多くないはずだからです。せいぜい、「本業の繁閑が大きい仕事の場合に、単純労働的なアルバイトを認める」、といった程度の会社が多いのではないでしょうか。

 しかし、中高年は話が別です。出世の階段を順調に登って役員を目指している人は副業などしないでしょうが、それ以外の人にとっては時間的な余裕も出来、老後資金への備えに力が入る年齢となり、しかもセカンドキャリアが意識されて来ます。

 人生100年時代を迎えて、定年後再雇用といっても限度がありますから、「元気な間は働こう」と考える中高年サラリーマンにとっては、セカンドキャリアを考える時期となります。そうした時に、副業で様々な可能性を試してみる事ができるのは、大変有難いことでしょう。

 定年後再雇用が終了してからセカンドキャリアを始める人もいるでしょうが、定年を機に定年後再雇用を断ってセカンドキャリアに進む人や、役職定年を機にセカンドキャリアに進む人も多いでしょう。そうした人が増えることは、企業としてもありがたいはずです。準備が順調ならば、定年や役職定年を待たずにセカンドキャリアに進んでもらえるかもしれません。それならさらにありがたいでしょう。そうであれば、その前から副業で準備をしておいてもらうことは企業にとっても悪い話ではありません。 

 日本企業は、終身雇用で年功序列ですから、定年を延長して70歳まで雇い続けるのは、金銭面で大いに負担です。そこで、定年後再雇用をするわけですが、再雇用された人はあまりハッピーでない場合も多いと聞きます。所得が大幅に下がる上に、昔の部下に仕えるケースもあり、お互いに大変やりにくい、ということもあるようです。

 「仕事があり、社会保険に加入できるだけありがたいと思え」と言われればその通りなのでしょうが、活躍の場が与えられないのであれば、社外に飛び出して活躍の場を探す方が幸せだ、という場合も多いでしょう。本人にとってのみならず、会社にとってもそうかもしれません。「会社は家族」であるから会社は社員の老後の幸せを祈るものだ、ということもありますから。

 そして何より、日本経済にとって、素晴らしいことです。社内で活躍の場が少なくなった人々がセカンドキャリアで活躍することは、日本経済全体にとって、少子高齢化で乏しくなっていく人的資源を有効に活用していける、ということですから。

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