Washington Files

2018年5月14日

»著者プロフィール
著者
閉じる

斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 トランプ氏が大統領選で勝利し、ホワイトハウス入りしてからも、二人の間ではぎくしゃくした関係が続いた。

 とくに二人の対立を決定的にしたのは、昨年7月、国民皆保険をめざす医療制度改革(オバマケア)をトランプ大統領の号令一下、廃案にする上院での法案審議だった。廃案に追い込もうとする共和党とこれを阻止しようとする民主党の票は真っ二つに分かれ、夜を徹しての白熱した論議が戦わされたが、最後に登壇したマケイン議員が民主党側にくみすることを宣言、結局1票差でオバマケアの存続が決まった。

トランプ政権が打ち出してきた一連のいわくつきの内外政策

 このほか、NATO(北大西洋条約機構)や国連に対するあいつぐ批判、移民制限措置、地球温暖化緩和をめざすパリ協定からの離脱、TTP(環太平洋経済連携協定)脱退など、トランプ政権が打ち出してきた一連のいわくつきの内外政策についても、マケイン議員は真っ向から反対の立場を表明してきている。

 マケイン議員が自分の葬儀へのトランプ大統領参列を断ったというニュースに、共和党議員の間では、驚きと動揺を隠せないでいる。とくに、同じ共和党のブッシュ元大統領夫妻のほか、民主党のオバマ前大統領夫妻まで葬儀出席に同意ずみと伝えられただけに、このままでは大統領以下現共和党体制の体面にもかかわる問題にもなりかねない。

 早速、共和党最長老のオーリン・ハッチ上院議員(ユタ州選出)がコメントを発表「マケイン議員が決めたことは馬鹿げている。考えを改め、大統領を葬儀に招くべきだ」といったんは語気鋭く抗議ののろしを上げた。

 しかし、その翌日、マケイン議員の長女メーガンさんがABCテレビのインタビューで「どうか父のことは静かに見守っていてほしい。とくにハッチ議員にはそうお願いしたい」と訴えかけたことを受け、ハッチ議員も自分の発言を撤回、マケイン家族に謝罪し、ひとまず騒ぎは収まっている。

 トランプ大統領の要人葬儀出席問題をめぐっては、さる4月23日、故バーバラ・ブッシュ大統領夫人の葬儀の際にも、話題となったばかりだ。

 この時は、テキサス州ヒューストンのブッシュ一家の教会で行われ、他州からも含め各階層から1500人近くの弔問客が訪れた。この中には、クリントン元大統領夫妻、オバマ大統領夫妻ら多くのVIP客も含まれていた。

 しかし、トランプ大統領は出席せず、メラニア夫人が代行した。現職大統領だけが出席しなかったことについて、ホワイトハウスは「警備上の混乱を避けるため」とだけ説明しているが、実際は、ブッシュ・ファミリーはかねてから、同じ共和党ながら過激でスキャンダルの多いトランプ大統領登場を好ましく思っておらず、最初からトランプ氏参列を念頭においていなかったことが背景にあったとの見方が強い。

 もともと共和党主流派は2016年大統領選挙では、濃厚な保守主義思想に染まったトランプ候補とは距離を置き、ポール・ライアン下院議長ら首脳部もトランプ氏を共和党候補として正式指名することについて最終段階まで態度を保留してきた。大統領当選後は、共和党議会は11月中間選挙を控えトランプ・ホワイトハウスとの「挙党一致体制」をアピールしてきてはいるものの、その底流にある“トランプ不信”には大きな変化はないようだ。

 今回のマケイン葬儀問題をめぐる騒ぎの背景には、トランプ政権発足以来の、こうした共和党内部にひそむ複雑な事情が存在することを物語っている。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。
 

関連記事

新着記事

»もっと見る