解体 ロシア外交

2011年3月24日

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エネルギー支援

 他方、プーチン首相はエネルギー部門での日本への支援に乗り出した。プーチン首相は、日本を「様々な問題はあるが、我々の良き隣人」と強調し、12日にサハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」から日本に対して火力発電用の液化天然ガス(LNG)の供給増をセチン副首相らに命じた。日本で一部の原子力発電が停止することによる代替発電のための気配りである。セチン副首相は、14日に日本から供給増の要請があったとし、計20万トンのLNGを緊急供給できると発表し(12日には最大で15万トンとしていた)、石炭供給も増やせると発表した。LNGは4月、5月にそれぞれ10万トン供給される予定である。このような措置をとるためには「サハリン2」の日本以外の関係企業と調整する必要があるが、ロシアは協力を取り付けることを明言した。さらなる支援の方法について、日本に対して協議も提案しているという。

 さらにプーチン首相は、15日に日本向け輸出に充当するためにサハリンの開発を促進するよう指示した。政府系の「ガスプロム」社の主導で開発が促進されることとなり、2015年を目途にガス田「サハリン2」のLNG工場を拡充し、対日輸出の拡大を可能にすることが目指されるという。

 また、プーチン首相は19日に極東のサハリン州を訪問し、放射能汚染を心配していた住民を安心させるとともに、日本への支援策の一環として、州内の資源開発を促進し、対日輸出を拡大するように指示した。同日には、日本を「迂回救済」するために、欧州向け天然ガス供給を増やすことも命じた。「迂回救済」の仕組みは、ロシアがパイプラインを用いて、欧州向けの天然ガスの供給を1日当たり6千万立方メートル増やせば、その余剰分約4万立方メートルのLNGが日本にタンカー輸送されるという計算である(後述のように、これはロシアにとっては経済戦略でもあるのだが)。

スポーツ分野

 さらに、ロシアの支援はスポーツ分野でも表明された。柔道を愛好するプーチン首相は、15日に支援の一環として、柔道の日本代表メンバーを家族と共にロシアに招待するようロシア柔道連盟に提案し、同日、連盟は全日本柔道連盟に正式な招待状を発送した。日本ではトレーニングが困難であるはずだとして、モスクワないし2014年の冬季オリンピック開催が予定されているソチに合宿所を設置すると提案してきたのである。

 加えて、21日から東京で開催が予定されていたフィギュアスケート世界選手権についても、ロシアが国際スケート連盟(ISU)に対して、モスクワで代替開催することを申し出たという(開催時期等は未定)。

民間レベルでも厚い支援

 ロシアの支援は政府レベルにととどまらない。インターネットなどには、地震の直後から日本を激励する書き込みが殺到し、日本大使館に献花に訪れる市民も目立った。さらに被災者や遺族への義捐金についての申し出が殺到したことから、ロシア外務省は12日にロシア国営銀行「ズベルバンク」にルーブル用と外貨(円、ドル、ユーロ)用に2種類の義援金受付口座を開設した。義捐金の申し出は、特に日本に近いサハリン州などで多く出たようである。

 またロシアの報道も日本に好意的だ。国民が冷静さを守って団結し、避難や支援も最善の形で行われていることなどを称賛し、他国で同じような災害が発生していたら大きな混乱が生じ、被害者ももっと増えたはずだと論じ、日本政府の情報公開の透明性も高く評価した。日本の日頃の震災対策や避難訓練などの成果だとの指摘もなされている。

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