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2018年5月18日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

自治体も関心

 エスプールプラスが8年前にこのサービスをスタートした時は、障がい者雇用に対する経営者の認識も低かったこともあり企業からは見向きもされなかった。しかし、大手自動車メーカーや大手金融機関がこのサービスを利用し始めてから、口コミで評判が伝わって契約する企業が増え始めたという。和田一紀社長は「今年は松戸、船橋でも新たに農園をオープンし、今年中には13か所に増える。ここで働く障がい者は月収約10万円の収入が得られ、就業機会のなかった障がい者の親から喜ばれている。行政からも注目され、愛知県豊明市はこの農園を誘致してくれて、障がい者雇用の受け皿にもなっている」と話す。

 豊明市にある農園は16年11月に3000坪の広さでオープンして現在、17社の企業から69人の障がい者が働いている。このうち51人が知的障がい者で、レタスやトマトを栽培している。契約しているのは豊明市、名古屋市とその周辺にある企業。同市の社会福祉課では「農園を使った就労サービスは、『障害者総合支援法』に基づく障がい者福祉サービスと並んで、多様な就労サービスの一つとして活用していきたい」と話している。

 自治体の窓口には、障がい者の親が就職先を求めてやってくるが、仕事先を見つけるのは難しい。自治体として初めてこの農園を誘致した小浮(こうき)正典(まさふみ)豊明市長は「障がい者の法定雇用率を達成したい企業と障がい者の就労ニーズをマッチさせた事業だ」と評価している。

定着率95%

 このサービスが受け入れられている大きな理由が、ビルや工場での清掃作業などを管理会社に委託する企業が増えているため、これまで障がい者にしてもらっていた仕事が減っているという現実がある。しかも、やっている仕事の多くが、清掃や郵便物の仕分けなど単純作業が多いため長続きがしないケースが多い。それに対して、この農園の仕事は相手が農作物のため、育てる楽しみがあり、定着率は95%と高く、辞める人が少ないという。

 16年の12月からこのサービスを利用しているタイヤの販売会社のトーヨータイヤジャパンでは現在6人の障がい者が働いている。営業が中心の会社で、貸しビルに入居しているため、清掃業務などもなく、障がい者に向いた職場がなかった。このため、法定雇用率の未達になり納付金を収める状態が続いていたという。下田昌弘総務人事部長は「タイヤを製造している工場があれば障がい者の仕事を見つけることができるが、一つひとつの営業店は人数が少ないので見つけるのが難しい。困っていたところに農園で働く話を聞いて契約することにした。1カ月に1~2回はスタッフが働きぶりを見に行っているが、明るい雰囲気で楽しんで働いてくれている。費用は掛かるが障がい者の社会参加につながるので、今後も続けたい」と前向きに捉えている。

 一方、厚労省は「障がい者の雇用の場はあくまで、その企業の中でみつけてほしい。障がい者の雇用を進めるため、仕事をサポートする制度や、事業者と障がい者に対して助言などをする『ジョブコーチ』制度などもあるので、こうした制度を活用して、企業や工場の中で働ける場をみつけるのが望ましい」(高澤航・職業安定局障害者雇用対策課補佐)と考えている。

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