赤坂英一の野球丸

2018年5月23日

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カープは浩二が中心のチーム

 福永さんの記憶に刻まれた鉄人の語録がもうひとつ。衣笠さんがカープ4度目の優勝に貢献し、打点王(102打点)とMVPのタイトルを獲得した1984年のことである。長年4番の「ミスター赤ヘル」山本浩二さんの脇に回っていた衣笠さんが、ようやく山本さんと肩を並べたと言われたこのとき、衣笠さんは福永さんにこう打ち明けた。

 「カープは浩二が中心のチームだから、浩二が引っ張っていかなきゃいけないんだよ」

 V9時代(1966~74年の9年連続リーグ優勝と日本一)の巨人におけるON(3番・王貞治、4番・長嶋茂雄)、王者と呼ばれた西武(1986~94年ごろ)を牽引したAK(3番・秋山幸二、4番・清原和博)などがそうであったように、同じチームで中軸を打ち、ともに引けを取らない実績を誇る打者同士の関係は極めて微妙なものだ。互いの力量は認めながら、主砲の座を競い合うライバルでもある以上、胸襟を開いて本音を語り合える間柄にもなれない。衣笠さんと山本さんも例外ではなかった。

 現役時代の衣笠さんは、同じチームの関係者に対し、山本さんについて語ること自体、稀だった。実際、福永さんも、突然衣笠さんが山本さんのことを語り出したため、非常に驚いたという。それも、浩二には負けないと自らのプライドをのぞかせるのではなく、「カープは浩二が中心でなければ」とチーム内のライバルをリスペクトしていたことに。

 そんな衣笠さんが最後に福永さんに電話を寄越したのは今年4月17日、TBSの中継するDeNA-巨人戦で最後のテレビ解説に臨む2日前だった。体調はどうかを気遣う福永さんに、衣笠さんはこう応えたそうだ。

「あんまりよろしくない」

 その言葉もまた紛れもなく、「衣笠選手の身体を本人よりも知り尽くした」盟友にだけ、「17年間休まなかった男」が漏らした本音だった。     (文中一部敬称略)

  
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