2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年5月29日

 トランプ政権によるイラン核合意からの米国の離脱や駐イスラエル米国大使館のエルサレムへの移転等、地域情勢が揺れる中東で、日本は何らかの役割を担えるのか。日本は、石油のほとんどを中東に依存しているが、イスラエルとパレスチナ間の中東和平に果たし得る役割はあるのか。安倍総理の中東訪問から、中東における日本の役割を考えてみたい。

(iStock.com/houani/grafvision/AH86/aee_werawan/alexeys/BrianLasenby)

 4月29日から5月3日まで、安倍総理は、アラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダン、イスラエル及びパレスチナを訪問した。UAEは、日本のエネルギー安全保障にとって極めて重要な国で、今回、日本とUAEは、エネルギー分野を含む広範な協力関係を確認した。ヨルダンは、イスラエル、シリア、イラク等を隣国として、地政学的に見ても、中東地域の安定に欠かせない国である。このヨルダンを日本が支援、協力することは、中東を安定化させることになる。イスラエルとパレスチナの中東和平問題では、米国や北欧諸国が仲介役を果たすことがあるが、日本は地道ながら、両国との良好な関係を維持しているので、それを生かす外交を展開することが出来る。今回の総理訪問には、企業等で構成される経済ミッションも同行した。各国との経済協力の発展は、中東地域の安定を下支えするものである。

 5月14日、イスラエルの建国70周年の記念日に、米国は、テルアビブにあった大使館を、米国がイスラエルの首都と認定する聖地エルサレムに移転した。これに反発して、パレスチナの人々は、ガザ地区で大規模な抗議デモを行った。

 これに先立ち、日本は、5月1日と2日、それぞれパレスチナとイスラエルの両当事者と首脳会談を行っている。その内容を紹介し、日本が中東和平に果たし得る役割と意義を考えてみたい。

 5月1日、安倍総理は、パレスチナのアッバース大統領と会談した。その際、日本は二国家解決を支持し、大使館をエルサレムに移転する予定がないことを表明した。日本は、エルサレム問題を含め、国連諸決議や当事者間の合意に基づき、中東和平問題が、平和的に解決されることを望んでいる。安倍総理は、また、米国の役割は大変重要で、米国から何らかの和平提案があれば、当事者が向き合って話し合い解決策を見出すことが大切だと述べた。日本は、4月24日に、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への追加1千万ドルの支援を決定し、更にガザ中央淡水化プラント建設計画や食糧への支援も行う予定である。

 5月2日、安倍総理は、イスラエルのネタニヤフ首相と会談し、中東和平に関しては、二国間解決を支持するが、米国の関与が不可欠であることも述べた。


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