政治・経済

2018年6月1日

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石井孝明 (いしい・たかあき)

経済・環境ジャーナリスト

慶大経卒。時事通信記者、経済誌フィナンシャル・ジャパン副編集長を経て現在、フリーで執筆活動を続ける。アゴラ研究所の運営するエネルギー情報サイト「GERP」の編集も担う。

 「遺伝子組み換えでない」。豆腐など大豆を原料とする食品の包装を見ると、目立つところにこんな文言が書かれている。消費者は「原料に遺伝子組み換え(GM)作物を使っていない」と思うはずだ。ところが、それが混じっているかもしれない。

(出所)厚生労働省の資料などを基にウェッジ作成 写真を拡大

 これは2001年に始まったGM作物の表示制度に基づく。大豆やトウモロコシなど8作物とそれらを主原料にする豆腐、納豆など33の加工食品が対象だ。現行制度では最大5%のGM原料が混じっていても「組み換えではない」と任意表示できる。

 NPOバイテク情報普及会が17年秋に行った調査によると(対象数2000人)、「遺伝子組み換えでない」という表示に74%が「GM作物がまったく含まれていない」と思っており、複数回答で78%が「安全性が高い」というイメージを抱いていた。公的制度が消費者の誤解を招き、商品の安全性強調に使われている。

 消費者庁は2013年に食品表示法が成立したことを受け、食品表示制度を見直している。その一環で消費者に誤解をもたらしかねないGM作物の表示問題に取り組んだ。そして有識者による「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」が、今年3月に報告書をまとめた。内容は次のようなものだ。

 ▼GM作物の表示制度の対象は現行のまま。

 ▼「遺伝子組み換えでない」という表示が許されるのは不検出(ほぼゼロ)の場合に限る。

 ▼不検出から5%以下の混入には、食品事業者のこれまでの自主的取り組みを尊重しながら「できる限り遺伝子組み換え作物の混入を減らしています」などの分かりやすい表示を行政と関係者で今後考える。

1997年に遺伝子組み換え作物を使った食品の表示制度がスタート。「遺伝子組み換えでない」の表示は今後厳格化される (写真・JIJI)

 提言を参考に、内閣府消費者委員会での審議を経て内閣府令である食品表示基準が改正される。ただしこの報告書では、まだ細部が詰められていないところが多い。5%以下混入した場合の表示方法、検査やトレース(追跡)制度の見直しなどだ。また報告書は、GM作物は食品安全委員会の安全性の審査を経たもので安全性が確認されていることを強調し、消費者の不安を取り除くリスクコミュニケーションや、表示制度を周知する取り組みの必要性も指摘した。しかし、そうした啓蒙活動で「政府のできることは限られる。難しい課題だ」(同庁食品表示企画課)という。

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