世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年6月8日

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 2018年5月24日、シンガポールでの6月12日の米朝首脳会談を前に、トランプ大統領は、金正恩委員長に宛てた書簡を公表して、米朝首脳会談を中止する意向を発表した。今まで、トランプ大統領は、重大な決定(シンガポールで米朝首脳会談を6月12日に開催すること等)をツイッター上で発表することが多かったが、今回は、金正恩委員長宛ての正式な書簡ということで、よく練られたトランプ政権全体で決断したことだと推察される。

(iStock.com/colematt/seamartini/Marija_piliponyte)

 書簡には、米朝首脳会談は北朝鮮が求めてきたもので、長い間準備してきたものだが、最近の北朝鮮の怒りや敵対心を考慮すると、悲しいけれど、今回の開催は適切な時期ではないと書かれている。ただ、書簡の後半では、いつか会う日を楽しみにしているとか、もし首脳会談に関して気が変わったら遠慮なく電話か書簡を下さい、と含みを持たせていた。

 同日(5月24日)、米国上院外交委員会では、ポンペオ国務長官を招いて、2019年度の外交予算に関する公聴会を行った。3時間半にわたる公聴会の冒頭、ポンペオ国務長官は、上記のトランプ大統領から金正恩委員長宛ての書簡を読み上げた。公聴会の中では、これに対する質問も上院議員たちから出された。例えば、北朝鮮に米国の真意はきちんと理解されたのか、米朝首脳会談の準備は万全だったのか、書簡には考えが変わったら電話をくれと書いてあるが北朝鮮はどう態度を変えるのか、リビア方式を認めさせるのか等、かなり厳しい質問もあった。

 ポンペオ国務長官は、米国は、米朝首脳会談に臨む準備が出来ていたし、それまで北朝鮮とも共に準備を進めてきたが、ここにきて北朝鮮と連絡が取れなくなったことを明かした。公聴会で、ポンペオ国務長官は、せっかく準備をしてきて「歴史的」首脳会談が開催される予定だったのにと、困った表情をした。

 メネンデス上院議員は、「非核化」の定義をポンペオ長官に確認した。それは、核兵器の「完全な」廃棄を意味するのか、不拡散やミサイル開発も含まれるのかを問い詰めた。ジョンソン議員は、トランプ大統領の書簡を評価しながらも、中朝国境では国連制裁の緩和が行われていないか等、疑問を呈した。ポンペオ長官は、中国にとっても北朝鮮の非核化は国益となると王毅外相が言っていたと答えた。

 この5月24日の米朝首脳会談中止の発表前には、韓国や中国からの外交攻勢もあった。5月22日、米韓首脳会談が、ワシントンで行われた。文大統領は、4月27日に南北首脳会談を行い、米朝首脳会談の道筋を付けてきた。米韓首脳会談でも米朝首脳会談の成功に向け、北朝鮮の意向を伝えたとされる。トランプ大統領は記者団の前で、良い会談になると思う、金正恩委員長は真剣である、と米朝首脳会談への期待を示した。一方、開催されるかもしれないし、開催されないかもしれない、と含みをもたせた。また、中国が北朝鮮の後ろ盾になっていることに関して、好ましくないと述べている。特に、金正恩委員長が大連で2回目の中朝首脳会談を行った後、態度を変えてきたことを嬉しくないとした。

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