WEDGE REPORT

2018年5月30日

»著者プロフィール

5月12日に東ティモールで総選挙が行われ、28日に最終結果が公表された。与野党逆転が確定し、それまで野党党首だったシャナナ・グスマン元首相が改めて政権を担当する。

東ティモールの独立の英雄・シャナナ・グスマン氏(ロイター/アフロ)

世代交代を進めることで一致していた「二人の英雄」

 2002年の独立以降、この国の政治は二人の政治家により担われてきた。シャナナ・グスマン氏とマリ・アルカティリ氏である。独立後、初代首相に就任したのがアルカティリ氏であり、この時、グスマン氏は象徴的存在の大統領に就任した。しかし、この二人の「独立の英雄」の仲はしっくりいかず、権力闘争に発展、2006年の政変につながる。一時縮小の動きを見せていた国連PKOが改めて増強されたものの、大統領等の暗殺未遂事件も起き、国内は大きく混乱した。アルカティリ氏は政変の責任を取って下野、代わってグスマン氏が政権の座に就いた。

 その後、国内は安定し、それまで10年にわたり駐留していたPKOも2012年、任務は完了したとして撤退していった。この頃から、それまで対立関係にあったグスマン氏とアルカティリ氏の関係が好転、二人の間に協力関係が垣間見えるようになる。グスマン首相は2015年2月16日、国内の安定を見届け、次代に政権を譲るべく当時50歳のルイ・マリア・デ・アラウージョ氏を首相に推挙、自らは指導大臣兼計画・戦略投資大臣としてお目付役に退いた。

 アラウージョ新首相は政党フレテリンに所属するが、このフレテリンはアルカティリ氏が牛耳る政党でもある。グスマン首相自身はCNRTを率いるが、ここでグスマン氏は野党のフレテリンの若手に敢えて政権を譲ったのである。裏には当然、グスマン氏とアルカティリ氏の合意があった。この時点では、両者は、世代交代を進めることで一致していたものと見られる。

約束を反故にしたアルカティリ

 事態が急展開を見せるのが、アラウージョ政権が発足して2年半後の2017年7月である。総選挙でフレテリンが第一党となったのだ。但し、この選挙ではどの政党も過半数を握ることができず、フレテリンは第一党の座を獲得したものの、どこかと連立を組まなければならない。ところが、フレテリンの誘いに応じるところはどこもなかった。やむなく、フレテリンは少数内閣を発足させたのである。しかも、首相の座にはアルカティリ氏自らが就いた。しかし、グスマン氏とアルカティリ氏との間には世代交代の約束があったはずである。

 グスマン氏は2年半前、自らのCNRTが与党であるにもかかわらず、時の野党のフレテリンに所属するアラウージョ氏に政権の座を譲った。それもこれも今後の東ティモールを考え、いつまでも独立の英雄が政権の座に居座っていてはいけない、との思いからだった。その思いはアルカティリ氏も共有したはずだ。ところがあろうことか、アルカティリ氏は約束を反故にして首相の座に返り咲く。グスマン氏が怒るのも無理はない。

編集部おすすめの関連記事

関連記事

新着記事

»もっと見る