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2018年5月31日

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面前DVや暴言も、脳に影響する

 「脳に影響」とは、具体的にどんなことか。本書によれば、たとえば、厳格な体罰を受けて育った人は、そうでない人に比べて、感情や思考をコントロールし、行動抑制力にかかわる「(右)前頭前野(内側部)」の容積が平均19.1%、「(左)前頭前野(背外側部)」の容積が14.5%小さくなっていた。

 小児期に、面前DVを長期間目撃してきた人は、そうではない人と比べ、視覚野の容積が平均6.1%減少していた。

 また、身体的虐待やネグレクトを受けることが深刻なトラウマとなることは知られているが、実際は、これらの虐待よりも、面前DVと暴言の複合的なマルトリートメントを受けた人が最もトラウマ状態が深刻だったという研究結果もあるという。

――暴言や面前DVも同じぐらい、もしくはそれ以上に深刻な影響を脳に与えるとは驚きました。

友田:どれだけ脳はデリケートか。これは科学的に立証されている事実です。ただ、本の中でも告白していますが、私自身も子育ての中でマルトリートメントをいっぱいしてきました。失敗してきました。だからお父さん、お母さんを責める気持ちは毛頭ないんです。育児は「育自」と思ってほしい。

 ほとんどの人がこれまで子育てを一度も習ってこなかった状態で親になるわけですから、家族や友人、行政をどんどん頼ってほしいです。

脳が傷ついても、適切なケアで回復できる

――たとえば、双子や兄弟で同じ親からマルトリートメントを受けても、影響が違うということもありますか?

友田:双子や兄弟でも、個性は違います。それぞれ個性があるので、親の子どもへの接し方も違ってくるでしょう。発達に特徴がある子は、親も対応に困り、厳しくしてしまうことがある。また、ストレスに強い子とそうでない子がいるので、脳への影響は子どもによって変わります。

――本書の中では適切なケアを受ければ回復も可能と書いてあります。

友田:お母さんお父さんを驚かせて終わりではよくないですからね。子どもの柔らかい脳は、適切なケアをすれば回復します。またやり直しがきくということをメッセージとして伝えたいですね。

――マルトリートメントをしてしまう親は、親自身もケアが必要な場合があるとも。

友田:親御さん自身も、幼少期に過度なマルトリートメントを受けてきた可能性があります。叩かれたり大声で怒鳴られたりして育ったから、同じことしてしまう。こころに傷を抱える親御さんにも、ケアが必要です。

50カ国以上で体罰は法的規制がある

――厚労省の「愛の鞭ゼロ作戦」では、子どもへの体罰などを法的に全面禁止している国は世界に50カ国以上あると紹介されています。友田さんは、日本でもそのような規制が必要だと思われますか?

友田:単に体罰を行った人を罰せよということではなく、法律的な整備があると効果が一気に上がるはずですよね。たとえば、タバコをレストランで吸わないのがマナーだと言ってもなかなか難しいけれど、条例で規制すれば吸う人はいなくなります。

――犯罪にはならない範囲の「体罰」に重い罰則を設けろということではなく、世の中の認識を大きく変えるための一手段として法的規制もありと。

友田:そうですね。体罰は百害あって一利なしですが、そのことに気づくことが重要なので、罰することを目的とするより、「体罰はどんな場合でもやってはいけない」というような認識を変えるための法的規制であればと考えます。

今回のポイント
・体罰はしつけにならない
・暴力だけでなく、面前DVや暴言も子どもの脳を傷つける
・マルトリートメントを受けても、適切なケアで回復できる

  
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