定年バックパッカー海外放浪記

2018年6月3日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年生まれの62歳。横浜生まれ、神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

(2017.2.25~4.26 61日間 総費用13万2000円〈航空券含む〉)

 3月17日。ブッダガヤの郊外にあるスジャータ村にオートリキショー(電動三輪車)をチャーターして出かけた。スジャータ村には、お釈迦様が山で厳しい修行をして村に下りてきた時に、村人がお釈迦様に滋養のあるものを食べてもらおうとミルク粥(現地語でスジャータ)を出したという伝承がある。

スジャータ村のお堂。お釈迦様とミルク粥を捧げる少女。その前に牛が横たわっている

 お釈迦様の故事を物語るお寺の境内で子供たちを教えているオジサンの先生から寄付を強要され、お寺をゆっくり見ようとすれば金目当ての押しかけのガイドが勝手に喋りだし、最後には大勢の子どもに包囲され、ほうほうのていで帰ろうと電動自動車に飛び乗った。ドライバーに早く出発するよう指示したが、間一髪で小学校低学年くらいと思われる少女が荷台にしがみついた。

 「ハロー、ミスター、マネー」を連呼しながら、車が走り出しても必死の形相で荷台しがみついて走っている。ホラー映画で髪の毛を振り乱した少女が走り去ろうとしている男の足にしがみついていた場面を思い出した。

 正直なところ憐憫の情は心の中にまったく湧いてこず、不気味な魔物を振り払いたいという思いだけであった。

金銭を与えないのは非情であろうか

 私は金銭や物をねだって向かってくる人に対して、徹底して無視することを旅の鉄則としている。途上国を歩いていればこうした人に頻繁に遭遇する。1人を相手にすれば、無数の人に追いかけられることになる。大金をバラまかない限り、金をもらいそびれた人々から罵声を浴びせられるという悲惨な結果になることが自明である。人々に囲まれて揉み合っているうちに貴重品を抜き取られるという危険もある。

 ちなみに欧米人のバックパッカーの大半は私と同様の対応をしている。

最貧地域のベンガル地方ではローカルバスの屋根も一杯である

おねだり強要と紙一重

 3月31日。ポカラ湖畔の峠であるサランコットを目指して歩いていた。途中の村落の近くの林で昼飯代わりのポテトチップを食べていた。

 すると8歳くらいの少年がどこからか見ていて「ハロー・ミスター」とすり寄ってきた。「ホエアー・ユー・ゴー?」「ホエアー・ユー・ホテル?」「チャイナ?」とか矢継ぎ早に質問してくる。私はこの少年が何らかの金銭的利益を期待していると判断してなるべく相手にしないようにしていた。

 さらに「ユー・ワンツ・ウオーター?」「ユー・ワンツ・ジュース?」「ユー・ワンツ・ホテル?」と聞き出そうとする。煩わしいので、私が手を振って立ち上がろうとすると、今度は「ギミー・チョコレート」「ユー・ハブ・ワン・ダラー?」と畳みかけてくる。最後には「ギミー・マネー」と小銭を要求。

 私が相手にせず歩き出すと後ろから大声で「ユー・バッド・ガイ」「ゴー・ツー・ヘル」とか罵声を浴びせてくる。途上国で子どもを相手したときのいつものパターンである。

 それにしてもおねだり英語が上手である。彼が5年も経てば日本の大学生の十倍上手な英語を操るであろうと思った。勉強しなくても子どもの頃から実践英会話で鍛えているので、日本の普通の旅行者が敵わないくらいベラベラとしゃべるようになるのである。

ダージリンのトイ・トレイン駅近くの路上のアスファルト舗装工事。出稼ぎ労働者による重労働だ

 帰路を急いでいたら遠くから少女が可愛い声で「ハロー・ミスター」と呼び掛けてきた。どうせおねだりが目的であろうと無視して下り坂の山道を早足で歩いていたら、突然目の前に少女が飛び出してきた。山道は段々畑を迂回して続いているが、少女は段々畑を飛び降りながら直線コースで走ってきたのである。

 私の前に立ちはだかると「ミスター・フエアー・ユー・ゴー?」「ユー・ハングリー?」「ユー・ハブ・ホテル?」とか何か金銭に繋がることはないかと必死である。私が例により完全無視して歩き出すと、少女は私に並んで小走りに歩きながら「ユー・ハブ・ペン?」「ユー・ハブ・チェンジ?」「ギミー・カード」「ギミー・キャンデー」と必死の形相で数百メートルもついてきたが、最後には根負けして散々現地語で悪態をついて戻って行った。

朝8時頃のコルカタの大通り。中央分離帯で寝ている人々

 4月6日。カトマンズ近郊の古都デュリケルでカメラを下げて散歩していた。ヒンズー寺院の境内で3人の少女が遊んでいた。3人は近づいてきて私が首からカメラをぶら下げているのを見つけて、無邪気そうに笑いながら3人で手を取り合ってポーズを取った。

 私がサンキューと言って立ち去ろうとすると「ユー・ハブ・ボールペン?」「ユー・ハブ・チョコレート?」とおねだりが始まった。オジサンは「ごめんね。何も持ってないよ」とやんわりとお断りすると大変なブーイング。3人から口々に罵声が飛んでくる羽目に。

 3人ともに身なりは清潔で近隣の普通の家庭の子どもであろう。外国人におねだりして何かをもらうということが日常的に普通の行為として地元の子どもたちの間で一般習慣化しているのであろうか。大人たちはこうした子どもの行為をどのように捉えているのか気になった。

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