中国はいま某国で

2011年4月18日

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谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

 MBT2000という戦車を、中国はペルーへ輸出しようとした。最初に納品された5台はペルーが2009年12月、首都リマで軍事パレードを実施した際にお目見え、時のペルー国防相は旧ソ連製戦車を中国製で一掃すると公言した。この商談は後、瓦解する。

武器輸出大国へ急速に変貌する中国

 実は問題の戦車、他国に売ってはいけないシロモノで、リマに雄姿を見せた5台はその後人知れず中国に返品された。一連のてんまつは、中国流商売のなんというかある種の図々しさと、この先中国が武器輸出で外交関係を開拓していくだろう未来図の両方について、いずれも示唆に富む。

 中国は武器輸出大国への道を歩んでいる。00年から09年までの間、中国は約50億米ドルの武器を輸出した。これは米、露、独、仏、英、蘭に次ぐ第7位。金額はまだ米露2大国に比べ10分の1以下に過ぎないものの、近年になるほど増勢だ(SIPRI=ストックホルム国際平和研究所データ。金額単位は表注を参照)。

 輸出先上位20国を見たのが右表で、パキスタンやバングラデシュ、ミャンマーやスリランカが多い。これではなるほど、包囲される形のインドが中国に警戒心を抱くわけである。

 ベネズエラは中国にとって石油輸入との見合い、アフリカ各国の場合、武器輸出と資源輸入が抱き合わせになっている事情も読み取れる。いずれにしろ問題含みの国が少なくない。

 中国からペルーへ戦車を売る商談は、09年11月、ペルーの大統領アラン・ガルシア氏が胡錦濤中国主席とシンガポールで会った時に成約した。

 折柄開催中だったのがAPEC首脳会議で、それを機に合意した。APECを武器売買の場に用いることは日本人の想定にない。かといって是非もないが、今後APECで各国首脳と会う日本の総理大臣は、中国と武器売買に絡む話をしたか確かめるのを習わしにするといいかもしれない。

戦車の心臓部
実はウクライナ製

 中国はペルーに武器で食い込もうとしていた。初めて輸出したのは携帯型地対空ミサイル25基で、09年のこと。SIPRIの調べでは110万米ドルほどの商談だった。

 その年12月5日、ペルーのガルシア大統領は対中自由貿易協定(FTA)の発効を宣したが、場所に選んだのが中国人民解放軍海軍駆逐艦の「石家荘」だ。セレモニーに軍事色を与えるため、その日に合わせ太平洋を越え来訪、ペルーの港に停泊中だった。

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