2024年4月20日(土)

Washington Files

2018年6月5日

 第3は、上記2点とも微妙にからみあう11月中間選挙が控えていることだ。

 選挙の見通しについては、過去のこの欄でもすでに触れてきたとおり(「トランプ弾劾と中間選挙の密接な関係」)、435人の議員全員が改選される下院では、これまでの選挙戦を通じ、野党民主党が有利な戦いを進めてきており、結果的に同党が多数を制する公算が大きくなっている。今回3分の1の議員が改選される上院では、民主党の改選議席数が圧倒的に多いことなどから同党は苦戦を強いられており、これまで同様、共和党が多数を維持するとみられている。

弾劾決議成立の可能性

 しかし、もし、前評判通り、民主党が下院を制することになった場合、トランプ氏本人にとっては深刻だ。

 というのは、民主党が下院で勝利した場合、トランプ氏に対する弾劾審議の適否を最初に判断する下院司法委員会委員長ポストが共和党から民主党に入れ替えになり、審議に弾みがつくほか、それに続く下院本会議審議でも民主党が多数を占めるため、弾劾決議(事実上の起訴)が成立する可能性も大きくなるからだ。

 従ってこれらの事情から、トランプ大統領としては、世界の耳目を集める歴史的な米朝首脳会談をなんとしても早期に実現させ、そこから実のある成果を導き出すことで米マスコミの関心をそらし、少しでも夏休み入り前に中間選挙に向けて共和党支持層固めを急ぐ必要に迫られていたといえる。

 ただ、最近の世論調査結果によると、米朝首脳会談開催がどの程度、中間選挙での有権者投票動向を左右するかどうかについては、「大差ない」と答えた人がわずかながら上回っており、意外にも一般の米国民の関心がトランプ氏の思い入れほど高くないことを示している。

 しかも、開催最終決定までにひと波乱あった今回の首脳会談では、当初大統領が大言壮語した「すみやかな北朝鮮の核廃棄」の約束とりつけは、ほとんど不可能となったばかりか、核廃棄させるためにこれまで北朝鮮に対してとってきた「最大限の圧力行使」政策の転換まで米側が譲歩せざる得ない状況となってきており、結果的に国民の関心を一手に集めるほどの成果も期待できなくなっているのが実情だ。

  
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