中島恵の「中国最新トレンド事情」

2018年6月8日

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中島恵 (なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年山梨県生まれ。新聞記者を経てフリージャーナリスト。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社)、『中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか』(プレジデント社)などがある。

――ネット販売が70%というのは、やはり今の中国を反映している傾向でしょうか?

北村氏:そうですね。中国の絵本市場は2000年代に始まり、06~09年ごろに大型のネット書店が参入してきたことによって、大きな変化が起こりました。中国の図書全体の売上高の中で、絵本を含む児童書は約25%と4分の1を占めており、最大のシェアを誇っています。中国の絵本市場はネットを通じて成長してきた、といっても過言ではないでしょう。

 読者はまずリアル書店で本を開いてみて、購入するときはネット、という人が多いです。こうした点は日本とも共通しているかもしれませんね。ネット書店の購入者が増えてきたのは3年ほど前からで、最も利用が多いのは『当当』や『京東』というサイト。そのほかに『天猫』の各ネット書店や『アマゾン』で購入する人も多いです。

 絵本は日本でも欧米でもまだ電子版になっていない、数少ない書籍のジャンルです。その点は中国も同じで、紙で見て、手で触ってこそ子どもの想像力を高めることができるからだといわれています。

――そうなんですね。中国ではどのような絵本が人気なのでしょうか?

北村氏:『当当』というサイトを見てみますと、絵本の中で欧米系の絵本のシェアが61%に上っていて最も多く、主流だといえます。それ以外が日本や韓国の絵本、中国オリジナルものになっています。欧米系というのは、たとえば『はらぺこあおむし』や『どんなにきみがすきだかあててごらん』などの世界的に人気がある名作ですね。

日本でもおなじみの『はらぺこあおむし』の中国版などが大人気

 弊社では、日本の絵本の翻訳だけでなく、オリジナルの絵本の制作にも取り組んでいます。中国人の絵本作家によるオリジナル絵本はこれまでに合計で40点に上り、2014年に出版した『悟空,乖』は日本に版権を販売しました。初めて中国から日本へ、という逆バージョンになりました。

――まだ中国では“絵本”の歴史は浅いと思いますが、お国柄の違いや、購入する中国人の意識や反応などは、どのようなものがあるでしょうか?

北村氏: これまで中国で発売されてきた本の多くはソフトカバーでした。絵本も同様でしたが、私たちは最初から日本と同じくハードカバーで販売を始めました。それが業界に徐々に浸透していき、最近ではハードカバーの絵本が増えてきました。欧米では絵本は「親から子へと読み継がれていくもの」という認識があり、長い期間、同じ本を大事に読みます。日本も同じところがありますが、これから中国でも絵本がそのような存在になっていくのではないかと思います。ただ、ハードカバーですと、多少料金が上がりますので、そこにまだ慣れていない読者もいるかと思います。また、セットものに人気があるのも中国の特徴でしょうか。

 先ほどもお話しましたが、中国でも、弊社の本に限らず、オリジナルの絵本がどんどん生まれるようになってきました。欧米の絵本作家のように、デザイナー出身で絵本も描くようになったり、画家が絵本の世界に進出し始めています。私たちもいろいろなところにアンテナを張って、絵本作家の発掘を心がけています。

 以前、中国では子どものしつけを教えるような、どちらかというと啓蒙的な絵本が人気でしたが、最近では心や愛情を育てるような、夢のある作品が人気になってくるなど、社会の変化とともに、絵本の世界にも少しずつ変化が見られます。弊社の『ティラノサウルス』シリーズは“愛”がテーマで、大人が読んでも感動するようなストーリーですが、これから中国でも、このように心温まる作品が読み継がれていくようになるのではないかと思っています。

  
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