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2018年6月11日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

夜間散布モデルも開発

 今回のジニアスとの提携事業は1年間が予定されており、ドロップコプターはジニアスから得た資金により同社のドローンを改善、特に夜間に自動飛行、花粉散布が行えるモデルを開発する。ハチは夜間には飛ばないため、ドローンを使えば従来の倍以上の効率での受粉も可能になる、と同社では主張している。

 さらに同社がドローンを使うことのメリットとして強調するのは、ドローンによる受粉が農作物保険の代わりになれる、という点だ。商業化が進んだ米国の農家の多くは不作などに備えて損害補償保険に加入しているが、この保険料が経営を圧迫するものになっている。しかし保険がなければ悪天候などのため収穫量が大幅に落ち込んだ際の減収につながる。

 たとえば今年、カリフォルニア州では2月に入り低気温と雨が続いたためアーモンドの開花が大幅に遅れ、サクランボの開花と重なってしまった。受粉を請け負うミツバチ農家の数が限られているため、アーモンドの受粉が長引いたことでサクランボの受粉が大きな影響を受けた。しかしドローン受粉を導入すればこうしたリスクは回避でき、保険に加入する必要も低減する、とドロップコプターではアピールしている。

 今回のニューヨークのリンゴ果樹園の導入では、果樹園の一部だけにドローン受粉を行うことで、残りのハチや人手を使った受粉地域との比較結果が得られる。もしドローンを使った方が受粉確率が高く、つまりは収穫高の向上につながる、という結果が出れば、来年以降もドローン受粉を他の作物にも広げていく方向で計画が進められている。

 技術の進歩が農業を救う、という話ではあるのだが、環境保護団体などからは「まずハチの絶滅を救うことが先決」という批判もある。ドローンや無人飛行機による広範囲の農薬散布がハチの生息区域を脅かし、今日の状況を作り上げた、という疑念もあるためだ。農業の自動化は未来の食糧確保に役立つのか、あるいはマイナス面も多いのか、今後の検証が必要とされている。

  
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