Washington Files

2018年6月11日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

常道からの逸脱

 まず、昨年1月政権発足以来の政権運営を見てみよう。

 とくに目立つのが、場当たり的な人事だ。重要閣僚や政権の中枢を担う補佐官クラスの人材が大統領個人の気分と好みでつぎつぎと入れ替わり、ホワイトハウス内は「明日は我が身か?」と浮足立った不安定な状態がいまも続いている。

 米議会スタッフたちの間では、さまざまな政策のすり合わせをするのにホワイトハウスのどの担当者とコンタクトしたらいいのか右往左往させられるケースも少なくないという。

 昨年2月、フリン大統領補佐官(国家安全保障担当)が辞任した後、昨年夏にはスパイサー報道官が解任、バノン首席戦略官が辞任、プライス厚生長官も公費乱用の批判を浴びて辞任、今年に入って、マクマスター大統領補佐官そしてティラーソン国務長官が辞任と、大きな異動があいついだ。加えて、米マスコミの間では、セッションズ司法長官解任も時間の問題との見方まで広まっている。

 このほか、70人近い大統領側近のうち、立場の違いや嫌気が理由でホワイトハウスを飛び出した離職者が全体の35%にも達しているという。この数字はオバマ政権時の4倍、レーガン政権時の2倍以上と異常に高い。

 にもかかわらず、トランプ・ホワイトハウスは「小さな政府」を錦の御旗にして“どぶさらい”作戦と呼ばれる大胆な人事刷新に取り組む一方で、各省庁では政策立案の要となる次官補(局長相当)クラスのポストが空席のままといった状態が続いており、業務にも随所で支障をきたしている。この点については、以前にこの欄で指摘した通りだ。

 いよいよ12日に迫った米朝首脳会談の最終準備に際しても、事情に通じた事務方責任者となるべき韓国駐在大使、実務統括責任者の東アジア太平洋担当国務次官補が1年以上も空席だったため、替わってソン・キム駐フィリピン大使を急遽マニラから会場となるシンガポールに送り込んだのは、その一例にすぎない。

 内外政策の実務面でも常道からの逸脱ぶりがめだっている。

 自国の国益を最優先するという触れ込みで始まった「アメリカ・ファースト」は、政権発足当初から北大西洋条約機構(NATO)をはじめ西側同盟諸国との関係に亀裂を生じさせてきた。

 中東では、これまでの共和党政権下でだれも手をつけなかった米国大使館のエルサレムへの移転を強行して以来、アラブ諸国の激しい反発を招き、西側主要国のみならず中国、ロシアまで関与した「イラン核合意」の一方的破棄によって国際情勢の混乱に拍車をかけている。

 経済・貿易面では、トランプ政権が日欧主要貿易国相手に鉄鋼・アルミニウム製品への高率の輸入課税を実施、各国もアメリカに対する対抗措置を講じるなど、世界貿易・投資縮小の恐れまで出てきている。

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