中島恵の「中国最新トレンド事情」

2018年6月12日

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中島恵 (なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年山梨県生まれ。新聞記者を経てフリージャーナリスト。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社)、『中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか』(プレジデント社)などがある。

 同じショッピングセンター内には書店兼雑貨店もあり、立ち寄ってみた。中国では今、国民の素地や知性、教養、文化レベルの向上を目指している。その一環として政府は図書館の充実を図るだけでなく、リアル書店向けに奨励金を出す政策を実施。全国の大都市にある書店の充実を図っているが、そうした効果もあり、「思わず立ち寄ってみたくなる、居心地のいい書店」が急激に増えている。

 この書店は、いわゆる「仏系」(ガツガツしないで淡泊、穏やかな性格で、自分の趣味や生活リズムを大切にするおっとり系男子)の若者を意識したような、かわいい雰囲気の雑貨やぬいぐるみ、マスキングテープ、文房具などを本とともに取り揃えていた。書店にカフェを併設するところも多く、そうした書店では、購入前の書籍を椅子に座ってじっくり読むことも可能だ。かつて、中国の公営の書店では、大学生などが冷たい地面に座り込み、こっそり書籍を読み耽る姿が見られたものだったが、そのような昔ながらの風景は減りつつある。デートで書店を訪れるカップルがいるほど洗練されてきているのだ。

仏系にも人気のかわいい書店兼雑貨店

 成熟化の傾向は医療の現場、病院でも見られた。私が定期的に観測している病院は、北京の協和病院や上海の瑞金病院などの大きめの病院だが、訪れるたびに機械化が進み、スマホでの予約や支払いが当たり前となっている。病院内のインフォメーションなどもすべてタッチパネルで表示されていて、わかりやすい。それに加えて、診察フロアでの患者の様子も以前とは少し異なっている。以前は各診察室のドアの前に陣取り、室内にいる患者の様子を覗き込む人もいたが、今では廊下の椅子に静かに座って待つ人が増えている。中国では診察室のドアを閉めないことが多く(診察室内の医師と患者のやりとりが廊下にいる人にも見えてしまうのが普通)その点はまだあまり変わっていない。しかし、病院内にカフェや売店ができたり、廊下の表示が増えたりという、小さな変化があった。

 これらの変化は、中国で生活する人にとっては、把握できないほどの小さな変化の積み重ねかもしれないが、定期的に中国を訪れて観察してみると、いずれも生活の質の向上につながるものであり、中国は行くたびに快適になっている、と実感する。「かゆいところに手が届く」とまではいえないが、よりよい生活へと社会が変貌し、人々が今の生活を謳歌しつつあることがひしひしと感じられるのだ。

  
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