世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年6月21日

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 ドイツのメルケル首相は6月4日、「持続可能な発展のための協議会」(Rat für Nachhaltige Entwicklung)で講演し、「欧州は岐路に立っている」として、EU改革についての案を発表した。主要点は次の通りである。

(iStock.com/DESKCUBE/y-studio/Yakovliev)

 変わりゆく世界において欧州は自らの役割を再定義しなければならない。我々は、世界秩序が書き換えられているのを目の当たりにしている。

 冷戦期の二極の秩序は、超大国としての米国と力強く成長する中国という世界に取って代わられた。欧州の確固たる反応が必要だ。欧州は、EUを21世紀の世界秩序の中にしっかり位置づけなければならない。

 EUは、常に繁栄と平和を約束してきた。これを将来も維持するために以下の5つの分野における行動が必要である。

1.    共通の外交、防衛、安保政策

2.    共通の発展、移民・難民政策:欧州の共通の難民制度、欧州の国境警備力、EU加盟国間の柔軟な団結。難民の源であるアフリカに対処するための「対アフリカ・マーシャル・プラン」を創設。

3.    共通の科学・研究、経済・金融同盟:研究費への支出、投資をGDP比3%まで引き上げる。経済・金融同盟、特にユーロ圏を次の段階に進める。ユーロ圏の危機に対処すべく、IMFと同様の欧州通貨基金を創設。EUの「投資予算」を設ける。多国間貿易協定、WTOの強化を求める。

4.    共通の教育、文化的多様性等の増進

5.    よりよく機能し得るEU:欧州評議会の規模縮小もタブー視しない。

 講演でメルケルは、EU共通の価値観と信念を実行すべきであると述べるとともに、欧州が手をこまねいているならば、欧州は世界の巨大な構造に打ち砕かれることになる、と警告している。

 メルケルは、国際協調主義に背を向けるトランプの米国に強い警戒感と嫌悪感を隠さない。5月に行われたEUサミットでも、欧州が今後とも長期にわたって米国に安全保障を依存すべきなのか疑問を呈している。メルケルの言う欧州の自主独立、共通の外交・防衛政策が、米国と距離を置くことを意味するのであれば懸念が残るが、欧州の自立という考え方自体は歓迎すべきである。

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