海野素央の Love Trumps Hate

2018年6月12日

»著者プロフィール
著者
閉じる

海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「トランプ大統領の『段階的非核化』」です。米朝首脳会談は、6月12日シンガポールで午前10時(日本時間)に始まります。本稿では、会談でトランプ大統領は「自分の政治日程に非核化をどのように組入れるのか」「どのような交渉術で臨むのか」「歴史的な言葉を残すのか」を中心に述べます。

首脳会談を前日にして会見に応じたポンペオ国務長官 (AP Photo/Susan Walsh)

「段階的非核化」を受け入れたトランプ大統領

 ドナルド・トランプ米大統領の本心は、米朝首脳会談で自分の政治日程に合わせて、非核化の道筋を作ることです。今年11月6日の中間選挙、20年11月3日の再選の選挙及び21年1月20日の就任演説です。ということは、トランプ氏は事実上、北朝鮮が主張している「段階的非核化」を受け入れたことになります。

 昨年、米中西部ミネソタ州セントポールでトランプ大統領に熱狂的なトランプ信者を対象にヒアリング調査を実施すると、彼らは日本や韓国といった同盟国の安全保障よりも、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)で米国本土を攻撃する可能性に懸念を示していました。一言で言えば、彼らは「本土優先論者」です。

 となると、「支持基盤第一主義」のトランプ氏にとって、非核化におけるICBMの国外搬出は優先度がかなり高く、「非核化の象徴」になる可能性があります。少なくとも、再選の選挙の前までに、搬出の場面を映像で有権者に流すことが不可欠です。トランプ支持者に、効果覿面だからです。

 さらに、選挙の視点から述べれば、中間選挙の投票日直前に、トランプ大統領を応援するFOXニュースのレポーターを北朝鮮に送り、核施設で検証の作業を行う専門家にインタビューをさせます。そこで専門家が「非核化の検証はとても順調に進んでいます」と答えれば、これも選挙に有利に働きます。トランプ氏としては、段階的非核化のプロセスを選挙目的に最大限利用したいところです。

関連記事

新着記事

»もっと見る