WEDGE REPORT

2018年6月14日

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児玉 博 (こだま・ひろし)

ジャーナリスト

1959年大分県生まれ。早稲田大学卒業。フリーランスジャーナリストとして、大手総合誌、ビジネス誌で活躍。著書に『日本株式会社の顧問弁護士 村瀬二郎の「二つの祖国」(文春新書)など。

 11月末、父義一はインドへの事業展開をするために一旦帰国する。が、息子将紘はサウジアラビアに残り、断続的に話し合いを持ち続けていた。サウジ政府に妥協はなかった。サウジアラムコに企画を提案する際、このプレゼンにはムハンマド皇太子も出席した。担当者から釘を指された。

ムハンマド皇太子と高崎将紘CEO

 「企画書にある〝社会貢献〟とか、〝救済〟といった言葉は削ってくれ。サウジには関係ないことだ」

 高崎らはサウジアラビアの切実さを皮膚感覚で知ることとなる。

 金融難民と呼ばれている人々の共通の認識は、銀行は信用できない、国さえも守ってはくれない、唯一身を守ってくれる術は所持する〝カネ〟だけなのだ。銀行に勝り、国よりも揺るぎない〝信用〟。サウジ政府が行き着いた結論は、政府の保障ともいえる〝サウジの石油〟を担保とし、その担保をもってドレミングがデジタルマネーを発行するというものだった。

 喩(たと)えればこうだ。労働者を雇用する企業がドレミングと契約。労働者の賃金をドレミングに送金。ドレミングはそれをデジタルマネーにし、企業のウォレット(財布)に送金、企業は労働者のウォレットに働いた分の賃金を支払う。決済はドレミングが契約しているあらゆるクレジット会社、プリペイド会社、銀行、もちろん「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」などで行うことができる。当初、ドレミングも決済機能を持とうとした。だが、欧米系のカード会社らと敵対関係になることを避けるために、決済機能は断念した。

 サウジアラビアにすればこれ以上のビジネスはない。既存の石油を担保にできるばかりか計り知れない手数料が入ってくるのだから。20億人との契約は未だしも、仮に10億人として、そうした労働者の月の稼ぎが3万~4万円として、手数料1%としてもざっと月に3000億~4000億円の収入が見込める。手数料次第では年間に優に5兆~6兆円の資金が流れ込む。ポスト石油を渇望するサウジ政府が飛びついたのも無理からぬことだ。

 形を変えた〝オイルマネー〟の信用力は絶大だ。タタグループと並ぶインドの巨大財閥の1つ「リライアンスADAグループ」は昨年10月からおよそ5億台の格安スマホを実質的に無料で配っている。2年以内に国内からATMが消えるインドはキャッシュレス社会が間近だ。そうした中、リライアンスは、モバイル通貨「ジオ」を普及させ、国内金融の主導権を握ること。リライアンスもサウジアラビアの石油を担保としたドレミングのシステム導入がほぼ決定している。キャッシュレス時代にドレミングほどの給与支払いシステムは存在しないからだ。

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