WEDGE REPORT

2018年6月14日

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児玉 博 (こだま・ひろし)

ジャーナリスト

1959年大分県生まれ。早稲田大学卒業。フリーランスジャーナリストとして、大手総合誌、ビジネス誌で活躍。著書に『日本株式会社の顧問弁護士 村瀬二郎の「二つの祖国」(文春新書)など。

 農家は融資を受けた上で特定の肥料、飼料会社とだけ決済する契約を結ぶ。そして、農産物、家畜が売れた時に、低金利の上に手数料を乗せて返済する新たな金融の世界を開拓しようとしている。途上国の農民にとっては、ある種のインセンティブとなる仕組みだ。こうしたシステムは小売店でも活用できるという。給与が入った瞬間、売上が立った瞬間、農産物が売れた瞬間にまずローン分が天引きされるシステムはドレミング以外ないのである。

 一見してドレミングが大手金融、政府の代理店として労働者や農家などからローンの取り立て人のように思われるかも知れないがそれは明確に違う。すべてがデジタル化されたシステムの中では、〝現金〟時代のような不当な搾取は起こりえない。なぜなら、すべてが可視化され、ドキュメントとして残るからだ。

 英国金融庁とドレミングとの交渉は現在も続いている。決定的な担保を持たない英国。政府が所有する金、ゴールドを提供すれば別だが、サウジアラビアの石油の担保は魅力的だ。イスラム国家サウジはイスラム法で金利ビジネスが禁止されているから手数料で儲けたい、一方英国は金利で儲けたい。金貨の表と裏。日本の一フィンテックベンチャー企業が、これほどまでの影響力を持ち得る時代がやって来たのだ。金融技術に裏打ちされたデジタルマネーが社会のありようを根底から変える時代が到来している。

 ドレミングは日本での可能性を見出すために金融庁も訪ねた。返ってきた言葉は「前例がありません」との一言だった。日本の孤立化は深まるばかりのようだ。(文中敬称略)

  
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◆Wedge2018年6月号より

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