定年バックパッカー海外放浪記

2018年6月17日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年生まれの62歳。横浜生まれ、神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

(2017.2.25~4.26 61日間 総費用13万2000円〈航空券含む〉)

海外の日本食レストランは魑魅魍魎

 4月6日。私は数カ月くらい海外旅行しても日本食が恋しくなるということは全くない。理由は明瞭で海外でまともな日本料理を食べようとすれば、日本人ビジネスマンが経費で接待するような高級日本レストランでなければまともな和食にありつけないからである。現地の物価を反映した経済的な日本食レストランでは、アジア系のコックがアレンジした和食風のまがいものを食するはめになる。

ナガルコットから眺望するヒマラヤの残照

 他方で現地食であれば、現地価格でそれなりに現地のオーソドックスな料理が提供されるのでコストパフォーマンス的に間違いない。日本人旅行者でインスタントの味噌汁やカップ麺を持参している方々がいるが、私はどんなローカル料理でも美味しく食べることができる“国際舌”“国際胃袋”を持っているので日本食を携行したことはない。

 私のイラン駐在時代にI君という優秀な同僚がいた。イランはトルコ料理、レバノン料理と並んでペルシア料理という伝統を持つ。なにしろ国土が広く南は熱帯、真ん中は砂漠、そして東西北に位置する3000~4000メートルの山脈に囲まれている。従って野菜・果物の種類が豊富で、例えばメロンも色々な品種のものが1年中市場に出回っている。野菜・果物で“西アジア原産”とされているものは現在のイランである。

 I君はペルシア料理が苦手で特に羊肉は全く受け付けなかった。彼が毎日ご飯とみそ汁、お新香だけで駐在員生活を送っていたのは傍目でも気の毒であった。彼のことを思い出すにつけ、国際舌・国際胃袋を持って幸せだと思う次第である。

カトマンズの軌跡、和食屋台K

1953年エベレスト初登頂したシェルパ、ネパールの英雄テンジン・ノルゲイ。ダージリンの登山学校博物館にて

 4月6日。ゲストハウスで日本人バックパッカーから、本格的和食を合理的値段で提供しているKという店があると聞いた。夕刻5時半に半信半疑でフードコートのような中庭の一角にあるというKを訪ねた。

 ネパール人若夫婦で切り盛りしており、屋台を少し大きくしたような店構えである。近くのテーブルでは数組の客が丼物を食べていたが、綺麗な盛り付けで見栄えが良い。和食は見た目が悪いと味も悪いという法則がある。

 メニューはかつ丼、スタミナ丼(焼き肉丼のような感じ)、親子丼、天ぷら定食で価格帯は280円~330円とお手頃である。

 空いているテーブルに座って私はかつ丼を注文。結構人気があるらしく欧米系女子が相席を求めてきた。レナという30代半ばのベルギー女性だ。彼女も私の助言を受けてかつ丼を注文。おしゃべりしていると2人前のかつ丼定食がお盆に乗って出てきた。

 見た限り日本の食堂のかつ丼と変わらない。味噌汁もお椀にお行儀よく豆腐やネギが入っている。そしてお新香が小皿に盛られているが、沢庵の切り方や柴漬けの盛り方が正統和食のように美しい。とんかつを一口食べて仰天。まさにサクサク感と卵とタレ汁のしっとり感が申し分ない。しかもご飯もふっくらと炊けていて全く違和感がない。みそ汁も見た目通りに美味しく出汁が効いている。お新香も塩加減が完璧である。

 後で聞くと、ご主人は日本の料理屋で3カ月修行したという。たった3カ月でこの味と手際の良さを習得できるものであろうか。ご主人曰く、日本のお店の料理長が丁寧に一つ一つ教えてくれたので感謝しているとのこと。日本の頑固な料理長がKのご主人のの真面目な人柄に惚れ込んで丹精込めて和食の技と知識を伝授した様子を想像した。

 カトマンズには10軒以上の日本食レストランがあるが、他の日本食屋と比較してKは200円くらい安い。毎日営業しているが、ご飯がなくなると店を閉めるので6時前には閉店となることが多い。

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