食の安全 常識・非常識

2018年6月21日

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松永和紀 (まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ジャーナリストに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)、『効かない健康食品 危ない天然・自然』(光文社新書)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(同)で科学ジャーナリスト賞受賞。「第三者委員会報告書格付け委員会」にも加わり、企業の第三者報告書にも目を光らせている。

現実的な理由も?

(4)間違った情報を是正する情報が数多くある

 「買ってはいけない」が出版された当時、一般の人たちはこうした情報に“免疫”がありませんでした。「危ない」という情報になら人は、わざわざお金を出して購入します。「その情報を覚えておけば安全になれる。人に伝えたら喜ばれる」と信じるからです。一方、「危なくない」という情報は安心にはつながりますが、とくに覚えておかなくてもいいことなので、書籍や雑誌になってもあまり売れません。

 しかし、インターネットでは現在、行政や企業が「実は危なくない」「こうやって総合的に安全を守っている」と解説する無料コンテンツが、大量にあります。それらの多くは、科学的根拠が示されています。食品安全委員会の評価書もすべて、公開されています。

 おかしな記事が出た後には、安全委員会は評価書自体を示して反論しましたし、間違いを指摘する個人ブログも出てきています。

 つまり、侵入してくる病原体=間違った情報に対して、ワクチンやら抗生物質やらがまあまああり、効果を発揮しているのかもしれません。

(5)ほかにニュースがいっぱい

 以上は、関係者の希望的観測でもあります。一方、「現実には……」として考察されているのは「ほかに関心を集めている話題があるから、盛り上がらないのでは」という指摘です。

 つまり、北朝鮮、日本大学アメリカンフットボール部、紀州のドン・ファン、サッカー・ワールドカップ……。テレビやラジオ等もこれらの取材に力を入れ、多くの時間を割いて報道します。以前なら、週刊誌記事を受けてテレビやラジオ等でも食の話題が取り上げられ、メディアミックスで「食べてはいけない」情報が広がったけれど、今はたまたまそういう状況にない、という説です。

(6)問い合わせや抗議をするほどの余裕が、消費者にはもうない

 汲々とした生活の中で、食費も切り詰めている人が増えているのが現実です。市販の食品は概ね安全、品質もまあまあ、と信じないと暮らしていけない、という人が多いのかもしれません。

 大丈夫です。農薬や食品添加物等についてはほぼ、問題がありません。たとえばトランス脂肪酸が気になるとしても、バランスのよい食事をし、菓子や菓子パンを毎日食べる、というような偏食はしない、という「常識」で十分です。

 特定の食品の良し悪しにはこだわらず、野菜やくだものたっぷりのバランスの良い食事をすることで、がんや心臓疾患等のリスクが大きく下がる、という科学的根拠があります。

消費者が、成長していると思いたい

 おそらく、消費者が踊らされない要因は、これらがいくつも組み合わされた複合的なものでしょう。

 いずれにせよ、惑わされないリテラシーが大事です。この点で、消費者は少しずつ成長しているのではないか、と思いたい。

 今回の騒動を受けて食品企業等をかなり取材しました。私から見れば名誉毀損ものの酷いことを書かれたメーカーが「自分たちもまだ努力が足りないことを思い知った。これからさらに努力したい」と言い、「記事に書かれているような中国の問題が、我が社の取引工場で起きていないか再点検して、ないことを確認した」という商社もありました。

 日本企業の多くも、そして、中国の生産者や加工業者の多くも、頑張っています。


【参考文献】

・厚生労働省・輸入食品監視業務
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/yunyu_kanshi/index.html

・輸入冷凍野菜品質安全協議会
http://www.tosaikyo.com/

・食品安全委員会・ソルビン酸カルシウム 評価書
http://www.fsc.go.jp/fsciis/evaluationDocument/show/kya20070320001

・食品安全委員会公式Facebook
https://www.facebook.com/cao.fscj

・FOOCOM.NET
http://www.foocom.net/
 

  
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