ネット炎上のかけらを拾いに

2018年6月21日

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「#セカオワ来韓公演ボイコット」

 「#セカオワ来韓公演ボイコット」というタグが飛び交ったのも6月中旬だ。4人組バンド「SEKAI NO OWARI」の舞台セットが女性蔑視だとして批判されている。

 ツイッター上にアップされている写真では、昭和時代のキャバレーや風俗街をモチーフにしたのかと思われるネオン装飾がある。「Drink Me」の文字の横にカクテルグラスに入った女性、ヒールを履いた女性の足3本、水商売風の女性など。

 抗議のツイートには「#WOMAN’S_BODY_IS_NOT_ORNAMENTS」「NO STAGE FOR SEXIST」の文字がある。

 ある韓国人ファンは、日本語で次のようにツイートした。

 「ここ最近、ツイッターの通知でいろんな方と意見を交わしました。「ボイコットをしてたのしいですか?」とか、「ボイコットをしたらファンではない」という言葉ももらいました。私は私が好きなアーティストが来韓してほしいです。ですが、その前に好きなアーティストが「差別主義者」だと言われるのは嫌です。(略)セカオワが私に教えてくれたのはある問題から「沈黙しない勇気」と「目を逸らさない勇気」です。(略)セカオワが正しいフィードバックして、みんなの声を聞いてくれるアーティストに成長してほしいです」(日本語の文法を一部修正)

 韓国のファンからは「フィードバックがほしい」という声が目立った。女性の体を性的なモチーフに使うこと、それを無批判に装飾に使うことは、新しい趣向ではない。それはもう古い時代の「楽しみ方」で、現代でやることではない。なぜ「セカオワ」が、このような現代では差別的だと批判を浴びるようなステージセットを作ってしまったのか。本人たちの説明を聞きたい。それが、韓国のファンたちの言いたかったことなのではないだろうか。

「みんな一生懸命やってるんだから」という擁護をしてしまう謎

 国内からもこのボイコットに対する賛同や理解がある一方で、ファンからの反発はやはり強い。その中で気になったのは、「みんなが作ったステージを悪く言われるのは許せなかった」「みんなが長い時間かけて考えてくれたステージセット」「メンバーが一生懸命作り上げたものなのに」といったコメントだ。

 RADWIMPSの件でもそうなのだが、若い層に多く見られる「一生懸命作ったものなのだから、文句を言わないで」という反応は一体何なのだろう。

 このようなコメントをする層の何割かは、なぜ抗議されているのかを理解していないというか、抗議の内容にはあまり興味がなく、ただただ「自分の好きなものにケチをつけられた」ことに傷ついているように見える。

 「ボイコット」という言葉を、暴力的なもの、「テロ」と同種のものと誤解していると思われるコメントも見られた。「ボイコット」は、抗議の意志を伝えるために不買などの行動を行うもの。今回の場合、韓国のファンたちは「このステージセットを使うのであれば来韓ツアーには行かない」ことを示していたと思われる。むしろ対象へ接触しない行為だと考えられるのだが。

 日本人のセカオワファンは「みんなが作ったステージ」と書いている。好きなアイドルやバンドのメンバーに対して、ファンが「みんな」という言葉を使うことは、たびたび見られる。

 「みんな」が「一生懸命」やっているのだから悪く言わないでという擁護を繰り返し見て感じるのは、若年層のファンの一部は、まるで自分の好きなアーティストは社会的に弱い立場にいるかのように思っているのではないかということだ。

 RADWIMPSやセカオワは、興行的に成功しているバンドといって差し支えないだろう。国内外に多くのファンがいる。だからこそ、発言や行動がときとして批判されることがある。それを「一生懸命やってるんだから」とかばうのは、まるで自分の弟妹か子どもをかばうかのような理屈だ。この、自分たちの好きなものへの無垢さは何なのだろう。

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