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2018年6月21日

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ジェイムズ・オリバー BBCパノラマ

課税逃れの温床とされるタックスヘイブン(租税回避地)の利用者などを記した「パナマ文書」をめぐり、2016年に同文書の流出元となった中米パナマの法律事務所モサック・フォンセカから、新たな文書が流出した。新たに流出した文書では、モサック・フォンセカが、同事務所の管理する法人のうち最大75%について、真の所有者を特定できなかったことが明らかになっている。

BBCの調査報道番組「パノラマ」が確認した新文書によると、データ流出が明らかになった2カ月後までに、モサック・フォンセカは英領バージン諸島にある同事務所管理の2万8500法人のうち70%以上について、受益所有者を特定できなかった。また同様に、パナマにある同事務所による管理を受けている法人の75%についても所有者を明らかにできなかった。

英領バージン諸島の法律は当時、企業向けサービスの提供者に対し、海外の代理人、銀行、法律事務所やその他のオフショア(国外業務委託)サービス提供者に事業所有者の確認を委託することを認めていた。ただ、当局の要請があった場合、これらの海外事業者は所有者情報を提供する必要があった。

モサック・フォンセカは2016年11月、規制違反および反マネーロンダリング法やその他の法律への違反を理由に、英領バージン諸島の金融サービス委員会から44万ドル(約4857万円)の罰金を課された。

今回流出したのは、パナマ文書が最初に公にされた2016年4月より前から2017年12月にかけての日付がある120万件の文書データファイル。データは南ドイツ新聞が入手し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に共有した。

新文書に含まれていた顧客や代理人とのメールによるやり取りでは、情報流出に対するモサック・フォンセカの反応や記録管理における穴を埋めようとする同事務所の必死の試み、その困難などが明らかになっている。事務所からの質問への回答で、スイスのある資産管理担当者はこう書いた。「顧客は消えた! これ以上探すことはできない!!!!!!」(編注:太字は元記事では大文字で強調されている)

多くの顧客がオフショア取引の仕組みを利用する主な理由を示すやり取りもある。

ウルグアイのあるフィナンシャル・プランナーは、以下のように記した。「(前略)この種類の仕組みを使う主な目的は、破壊されてしまった。機密保持性という目的が」。

別の代理人はこう書いた。「(前略)顧客の名は、顧客の国の当局者の知るところとなった。モサックのせいで、顧客は所得税を払わなければならない」。

英下院決算委員会の前委員長、マーガレット・ホッジ下院議員は、「マネーロンダリングや税金逃れ、脱税その他の犯罪の撲滅に取り組むなら、我々には絶対に受益所有者の公的登録を手に入れる必要があると、すでに証明済みながらも、さらなる証明に新文書はなった」と語った。

パナマ文書の発覚を受けて、英政府からの圧力もあり、英領バージン諸島や英国のほかの海外領土は、自治領の法的管轄権に企業の受益所有権の登録制度を作った。しかしこの登録制度は情報提供をモサック・フォンセカのようなオフショアサービス提供者に頼っている。そして、登録簿を直接閲覧できるのは英領バージン諸島など自治領の当局者に限られ、一般には公開されていない。

英領バージン諸島は、登録簿は秘密ではなく、当局者や関連する英国の当局者の要請を受ければ1時間以内に閲覧可能だとしている。英領バージン諸島は、同自治領が世界的な透明性に関する取り組みの最前線にいると話している。

英領バージン諸島の報道官は、「公的登録制度は(編注:問題の特効薬となる)銀の弾丸ではない。誰が情報を見られるかの問題ではなく、情報が検証され、正確で、結果として法執行機関にとって有効かどうかが問題だ。透明性を確保する上で、検証された登録制度は検証されない公的登録制度よりもずっと強固で、有効な手法だ」と述べた。

英領バージン諸島は、精査可能な公的登録制度を求める圧力に抵抗してきた。

英政府は先月、2020年までに同国の海外領土に対し公的登録制度を整備するよう強制する、制裁及び反マネーロンダリング法案の修正案を可決した。英領バージン諸島の自治政府は法的な異議申し立てを検討している

アンドリュー・ミッチェル元英国際開発相(保守党)と共に修正案を提出したホッジ会員議員は、「もし英領バージン諸島の自治政府が、英議会に対し訴訟を起こして納税者の金を浪費することを選ぶなら、私はあきれる。英議会はいまや英政府の支持も受けている」と話す。

英領バージン諸島・金融サービス委員会の報道官は、(英政府による)法的助言が「公的登録制度の強制は、深刻な憲法上の問題や人権問題を引き起こす。繰り返し主張しているように、我々の立場は、世界的標準となるまで公的登録制度を導入しないというものだ」と述べた。

パナマ文書に関する報道機関による調査は、2016年4月に公になった。BBCや他の100以上のメディア企業が、モサック・フォンセカから流出した1150万件の文書を基にした記事を公開した。

調査はICIJが取りまとめており、76の国から集まったジャーナリストが、南ドイツ新聞からICIJに引き渡された社内メールや企業文書を精査している。

南ドイツ新聞は、「ジョン・ドー」(日本の「名無しの権兵衛」に相当)という偽名を使っている特命の情報源からデータを入手した。

英国での調査は、BBCパノラマと英紙ガーディアンが主導している。

流出文書の中には、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の近しい友人、チェロ奏者のセルゲイ・ロルドゥギン氏によるマネーロンダリング疑惑、国際サッカー連盟(FIFA)の汚職疑惑、制裁破りや組織的な脱税といった問題に関連する文書が含まれている。

当時のデイビッド・キャメロン英首相は、父親(故人)が所有していたオフショア投資ファンドを疑問視する声の集中砲火を受けた。また、当時のアイスランド首相、シグムンドゥル・グンロイグソン氏は、海外資産の申告を怠っていたことが明らかになり辞任に追い込まれた。

パキスタンの首相だったナワズ・シャリフ氏は昨年、同氏の家族によるオフショア金融取引を暴こうとした調査報道を受けて辞任した。

パナマ警察はモサック・フォンセカの事務所を家宅捜索した。また2016年の年末までに、79の国から政府や企業が、モサック・フォンセカや協業していた企業、あるいはモサック・フォンセカの顧客に対し、150件の取り調べ、会計検査、または調査を行った。

新たに流出した文書では、英重大不正監視局を含む世界中の当局者が、流出文書で確認された個人や企業に関する情報をモサック・フォンセカに要求する様子が示されている。

モサック・フォンセカによる文書はこれまでに、英歳入税関庁を含む多くの税当局によっても入手されている。英歳入税関庁は流出データに報奨金(金額は非公開)を支払った。

英歳入税関庁は2017年11月、パナマ文書に関連して66件の調査が進んでおり、1億ポンド(約146億円)の追徴課税を予定していると明らかにした。

モサック・フォンセカは3月、風評被害とパナマ当局の措置を理由に、閉鎖を発表した。同事務所の設立者は今月発表した声明で、設立者自身も、事務所も、その従業員も、「違法行為に関わっていない」と述べた。

(英語記事 Panama Papers: Mossack Fonseca was unable to identify company owners

提供元:https://www.bbc.com/japanese/44557677

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