2024年4月23日(火)

Wedge REPORT

2011年4月27日

 矢崎校長は、「たとえ揺れなくても、行動するということが大切。『どうせまた大丈夫』という意識では、今回のように本当に大地震が起こったとき、防げる被害も防げなくなる可能性がある」と、管理職として今後も緊急地震速報を活用した避難訓練に力を入れていく決意を述べた。

 緊急地震速報については、賛否が分かれている。「発生確率が40%程度」「震源地がずれていることが多い」など、否定的な意見も少なくない中、高島第一小の避難訓練は、速報を単純に「地震が起きたか起きないか」という当たり外れで評価するのではなく、子どもたちの防災意識や判断能力を高めていく術として活用しており、非常に有効と思われる。既述のように、予算等の問題もあるが、すでに東大地震研らが設置している地震計は首都圏近郊に294ヵ所あり、その設置場所の多くは学校だという。まずはこれらの学校で有効利用していくことから始めていくのは可能であろう。

 また、緊急地震速報の設置が難しい学校でも、従来の避難訓練の中でまだまだ工夫の余地があるはずだ。前出の渡邉教授は、「登下校中のように緊急地震速報が受けられる状況にない場合や、速報なしに突然揺れが発生する場合などに対応するには,いかなる状況で地震が発生しても安全に行動できるように学んでおく必要がある。実際に体を動かす訓練でなくとも、図上訓練や卓上訓練のようなシミュレーションでもある程度効果が期待できる」と指摘する。例えば、登下校中はもちろん、理科の実験中、体育館で体育の授業を行っている時、校外学習の時など、高島第一小のようにそれぞれの場面で緊急地震速報を使って訓練ができなくとも、「このような時に地震が発生したらどうする?」と先生が生徒たちに問いかけることが必要なのである。

 渡邉教授も矢崎校長も、「自分自身で考え、行動できる習慣をつけておくこと」の重要性を強く認識している。多くの学校で形骸化してしまっている避難訓練。今回の大地震を教訓に、子どもたちの思考力・判断力を高められる内容へと改善すべきではないだろうか。

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