世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年7月6日

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 上海協力機構(SCO)は、6月9日から10日にかけて中国の青島で首脳会議を開催し、首脳宣言として「青島宣言」を採択した。SCOの加盟国は、中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、インド、パキスタンで、地域協力機構としては加盟国の総面積は世界最大、加盟国の総GDPは世界の20%、総人口は世界の40%を占める。

(terdpong pangwong/anitnov/aomeditor/iStock/Getty Images Plus)

 青島宣言は、北朝鮮の非核化問題、イラン核合意、シリア問題、通商問題、一帯一路、反テロに至る、広範な問題について取り上げている。ここでは、特に、通商問題と一帯一路に焦点を当てることにしたい。

 青島宣言は、通商問題については、次のような点を挙げている。当然、トランプ政権の保護主義的な通商政策を念頭に置いたものである。

・グローバル経済は保護貿易、一国主義などの課題に直面

・WTOを多国間貿易のルールを定める場として重視

・開放的なグローバル経済を支持

・あらゆる保護主義に反対

 こうした内容自体は、現状認識、方向性ともに間違っていない。この内容通りの行動が望まれる。SCOを主導する立場にある中国は、国家主義的産業政策である「中国製造2025」を掲げ、巨額の補助金の交付、国家規模での知的所有権の侵害、外国企業に対する技術移転の強要といったことをしている。これは、保護主義的な通商政策に他ならない。中国の行動にはWTOのルールに抵触するようなものも含まれている。青島宣言の文言に従って、ルールを重視した通商政策をとれなければ、青島宣言は異議申し立て以上の意味はないことになる。今後の行動に、中国、そしてSCOの信用がかかっていると言えるだろう。

 一帯一路については、一帯一路を支持すること、ロシアが主導するユーラシア経済同盟(EEU)との連結を推進すること、などが盛り込まれた。EEUは、2015年に発足した旧ソ連諸国による経済同盟で、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギスが加盟している。EEUと一帯一路との連携は、プーチン大統領がかねてより積極的に推進している。プーチンには、この連携によってTPPに対抗する構想を表明していた。また、ロシアのGDPは中国の約10分の1に過ぎないから、連携することで中国のマネーに期待したいという思惑もあろう。

 他方、一帯一路を自国への包囲に繋がるとして強く警戒しているインドは、青島宣言においても従来通り一帯一路を支持しなかった。一帯一路は、インドと敵対するパキスタンへの経済支援、インド洋沿岸諸国に中国の息のかかった港湾施設等を建設する、いわゆる「真珠の首飾り」の強化に繋がるためである。SCOは、こうした同床異夢を含むが、中国としては一帯一路を推進するツールとしてSCOを用いている。青島宣言とは別に、習近平国家主席は、全体会議で行った演説で、SCO銀行連合体への300億元(約5100億円)相当の特別融資枠を設けることを表明するなどしている。

 SCOは、一筋縄にはいかない中央アジア諸国を含み、敵対するインドとパキスタンが加盟しているなど、その結束力には大きな限界がある。習近平は「SCO運命共同体を構築したい」と述べたが、運命共同体と呼べるような組織になるのは困難であると思われる。今後も、価値観を共有する共同体ではなく、交錯する利害関係の中に実利を見出す、取引重視のスタイルをとっていくことになろう。インドが一帯一路を支持しないことが容認されているのは、それを象徴しているように思われる。
 

  
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