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2018年7月2日

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パリ近郊レオのスド・フランシリエン刑務所で1日午前11時20分(日本時間同午後6時20分)ごろ、服役中のルドワヌ・ファイド受刑者(46)がヘリコプターをハイジャックして脱獄した。

ファイド受刑者は、アサルトライフルなどで武装した共謀者3人の助けを借りて脱獄した。受刑者の脱獄は2013年に続いて2回目で、警察は約3000人体制で捜索に当たっている。負傷者はなかった。

脱獄劇では、目出し帽を被った男2人が発煙弾と電気工具を使い、ファイド受刑者が家族と話していた面会室に押し入った。

3人目の男は刑務所の中庭で、ハイジャックしたヘリコプターと操縦士を人質にとり、待機させていた。ヘリコプターは刑務所から約20キロ北東のフォントネー・トレジニーにある小さい航空クラブのもの。受刑者の協力者たちが、生徒を待っていた講師を人質に取り、刑務所へ飛ぶよう指示したという。

受刑者を乗せたヘリコプターは、刑務所から約60キロ北のゴネス地域に乗り捨てられているのを地元警察が発見した。

ファイド受刑者は、警官1人が死亡した強盗未遂で25年の禁錮刑を受けていた。

2013年の脱獄では、4人の刑務官を人間の盾にしながらダイナマイトで刑務所の扉を破って脱走。フランス北部の刑務所に到着してから30分後の出来事で、6週間逃走し続けた。

「目を見張る脱獄」

フランスのニコル・ベルベ司法相は同日夕、スド・フランシリエン刑務所を訪問し、事件を「目を見張る脱獄」だと述べた。

ベルベ氏は、「入念な準備をした特殊部隊が、ドローン(無人機)で事前にこの地域を調査していたのかもしれない」と話した。

ヘリコプターが着陸した中庭は、刑務所で唯一、航空機を妨害する網が張られていない場所だった。

刑務所労組のマルシャル・ドゥラブロイ代表は、服役囚は「刑務所を出るとき以外は」その中庭を使わないからだと説明した。

この逃走劇でけが人は出なかった。人質となっていたパイロットも解放されたが、ショック状態のため病院に搬送された。

ファイド受刑者はヘリコプターからルノー社の黒い「メガーヌ」に乗り換え、高速道路A1号に向かうのが目撃されている。この車はその後、パリ郊外のオルネー・スー・ボワのショッピングセンターの駐車場でエンジンが過熱状態にあるのが発見された。

ファイド受刑者はその後、1日午後に白いバンに乗り換えたとされている。

ハリウッドに感化されたギャング

1972年生まれのファイド受刑者は、治安が悪いことで有名なパリの地域で育った。1990年代には、パリで強盗やゆすりに関わるギャングを率いていた。

受刑者は自分のライフスタイルを、アル・パチーノ主演映画「スカーフェイス」などハリウッドのギャング映画に影響を受けたと語っている。

特に、米国のマイケル・マン監督の「ヒート」など、スタイリッシュなスリラー映画を熱愛し、パリの映画祭でマン監督に「あなたは私の技術顧問だった」と話しかけたこともある。

ファイド受刑者は、「ヒート」を何十回も見て銀行強盗の技術を磨いたとしている。

受刑者は2009年、パリ郊外の犯罪多発地域で生まれ育ち、自分も犯罪に手を染めていく半生をつづった本を出版した。

その際には犯罪から足を洗うと宣言していたものの、1年後には強盗未遂事件にかかわり、レオの刑務所に服役した。

自伝出版とそのプロモーション活動で次々とマスコミに登場したことを受け、フランスの警察はファイド受刑者に「レクリバン(作家)」というあだ名をつけている。

最近までファイド受刑者を担当していた刑務官は、同受刑者は看守といさかいを起こすことは一度もなかったが、自分たちは「常に警戒していた」と話した。

「ファイド受刑者は常に頭のどこかで、脱獄のことを考えていた。とても礼儀正しかったが、そうした物腰の裏で、常になにか企んで、隠していた」

ヘリコプターでフランスの刑務所から脱獄した服役囚は他にもいる。

2001年にはフランス南部ドラギニャンの刑務所で、サントロペからハイジャックされたヘリコプターを使い3人の強盗犯が脱走した。

その2年後には、国際麻薬組織を運営していた疑いで収容されていた被告3人が、南部エクス・アン・プロバンスの留置所から同様の手口で脱出している。

(英語記事 Gangster in helicopter prison break

提供元:https://www.bbc.com/japanese/44678113

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