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2018年7月4日

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フィル・マクナルティー、BBCサッカー筆頭記者

3日に行われたサッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会決勝トーナメント1回戦、イングランド対コロンビアは、イングランドが1-1からのペナルティキック(PK)戦を4-3で制し、ベスト8に進出した。

イングランドがW杯でPK戦に勝つのはこれが初めて。イングランドは7日にスウェーデンと対戦する。

モスクワのスパルタク・スタジアムで興奮が高まるなか、イングランドのGKジョーダン・ピックフォードがコロンビアのFWカルロス・バッカのシュートを止めた後、MFエリック・ダイアーが勝利の一撃を決めた。

ギャレス・サウスゲイト監督はスタッフと勝利を祝い、選手たちはピックフォードとダイアーに飛びついて祝福した。イングランドがW杯の決勝トーナメントで勝ち星を挙げたのは、2006年以降で初めて。

FWハリー・ケインがPKを決めた前半を経て、イングランドは小競り合い続きの試合を無傷で抜け出そうとしていた。しかし、後半終了直前にコロンビアがDFジェリー・ミナのゴールで同点に追いつき、コロンビア・サポーターは狂喜に沸いた。

30分の延長戦でも決着はつかず、イングランドにとってはすさまじい緊張感のPK戦にもつれこんだ。イングランドは主要国際大会における過去7回のPK戦のうち、1度しか勝てていないからだ。

MFジョーダン・ヘンダーソンのシュートがGKダビド・オスピナに止められ、またしてもイングランドの苦難が続くのかと思われた。しかしコロンビアのMFマテウス・ウリベがシュートを枠外に外したことで、ピックフォードとダイアーがイングランドの救世主となる道が開かれた。

ここから先は決勝戦まで、イングランドは過去のW杯優勝国とは戦わずに済む。準々決勝を制した場合、15日の準決勝ではクロアチアか主催国ロシアと戦うことになる。

度胸試しに勝ったイングランド

モスクワでの一戦は、騒音とイエローカード、そして悪意に満ちたものだった。この度胸試しを生き抜いたことは、今大会をさらに戦い続けるイングランドにとって、非常に貴重な経験になる。

PK戦にまつわる不安感を拭い去ったおかげで、気分が盛り上がっている。この高揚感は先々の展開でもまた、イングランドを助けてくれるかもしれない。

ホセ・ペケルマン監督率いるコロンビアの狙いは、キックオフの瞬間から明確だった。その肉弾戦にイングランドが巻き込まれたなら、得をするのはコロンビアだっただろう。

イングランドはフィジカルなぶつかり合いを、ぎりぎりで生き延びた。それでも、勝利の満足感がさらに高まるような形での戦いぶりだった。

不屈のチームプレイだった。と同時にその中でまたしても、個々の選手が光るものを見せた。

ピックフォードは先のベルギー戦でのパフォーマンスで批判を浴びたが、この一戦では傑出したプレーを見せた。PK戦で最後にバッカのシュートを止めただけでなく、約30メートル手前から雷撃のように打ち込まれたウリベのドライブシュートも止めてみせた。ただしこのセーブは残念ながら、ミナの同点ゴールにつながるコーナーキックを呼んでしまった。

PK戦でのDFキーラン・トリッピアーのシュートも、成長ぶりを見せ付けるものだった。

栄光まであと一歩

サウスゲイト監督は、目の前の一戦を大事に戦うと言い続けてきた。この言葉は、1990年のW杯イタリア大会で準決勝に進出して以来、最高の機会を与えられてきた今大会のイングランド代表に対する期待を抑えるための手段だった。

もしサウスゲイト監督がスパルタク・スタジアムのゴール裏で歌い続けるサポーター達の声を聞いていたら、期待にふたをするなど到底無理だと気づいたかもしれない。

この決勝トーナメント1回戦は肉体的にも精神的にも重荷で、イングランドはそこで全力を尽くした。かなり疲弊しているはずだ。その状態でこの次に迎えるのは、タフでよくまとまったスウェーデン代表と戦う。

もしスウェーデンを突破できれば、ロシアかクロアチアと戦う準決勝が見えてくる。

じっと耐えてひたすら努力することで、イングランドはこれまでたびたび逃してきた、勝利の方程式を見つけた。高揚した気持ちで、ゼレノゴルスクの練習場に帰っただろう。

しかしやるべきことはまだあり、今回の戦い方も決して完璧ではなかった。しかしイングランド代表とサウスゲイト監督は今、グループステージのベルギー戦で失った勢いを取り戻した。それをもとに、さらに調子を上げていくという期待も持てる。

支離滅裂だったガイガー主審

コロンビアはこの試合を、戦場にする気満々で臨んだ。試合開始直後の問題行為を取り締まらなかったために、米国出身のマイク・ガイガー主審は試合をしっかり制御することができなかった。

主審の権限をもって的確な判断を言い渡す代わりに、ガイガー主審は多くの場面で、双方の選手と長々と話し合いを続けてしまった。

おかげで特にコロンビアが、ガイガー主審をぎりぎりまで追い詰めた。しかしイングランドも完全な潔白ではない。ヘンダーソンとDFハリー・マグワイアは大げさなアピールで非難されたし、他の選手も危ない橋を渡っていた。

選手たちが明らかに審判の決定を尊重せず、問題行動を重ねたこの試合は、どんな審判にとっても采配が難しいものだったはずだ。しかし今大会の残る大試合は、自分の権限をもっときちんと自覚している審判に託してもらいたいものだ。

マン・オブ・ザ・マッチ ― FWハリー・ケイン(イングランド)

試合の統計――ケインが1939年以来のイングランド代表記録を打ち立てる

  • イングランド代表が主要国際大会でのPK戦で勝利したのはわずか2回目。前回の勝利は1996年欧州選手権(ユーロ)でのことで、相手はスペイン代表だった
  • イングランドはW杯で2006年ドイツ大会以来の準々決勝進出
  • コロンビアはW杯の決勝トーナメントで4度戦い、そのうち3回敗北している(1990年イタリアW杯でベスト16、2014年ブラジル大会でベスト8)
  • 今大会、PK戦で先攻を取った3チームはいずれも敗北している
  • ハリー・ケインはイングランド代表として6試合連続で得点を挙げた。これは1939年のトミー・ロートン以来の記録
  • ケインはイングランド代表として出場したW杯での最初の3試合で6得点した。W杯デビューからの3試合でケインより多く得点した選手はこれまでに3人しかいない。その3人はハンガリーのシャーンドル・コシチュ(9得点)、ドイツのゲルト・ミュラー(7得点)、アルゼンチンのギジェルモ・スタービレ(7得点)だ
  • W杯でこの試合のケインより多くの反則を受けた選手は、1998年フランスW杯でのアラン・シアラーしかいない。この試合でケインは9度の反則行為を受けたが、シアラーは1998年フランスW杯のチュニジア戦で11度もの反則行為を受けた
  • ケインはギャレス・サウスゲイト監督の下でイングランド代表として戦った最近10試合で14得点を挙げている。中でも主将に任命された8試合では全試合でゴールを決めた(12得点)
  • ミナはW杯で出場した3試合全てで得点している。その3得点は全て頭でのゴールだった
  • ケインは今大会、ゴール枠内に収まるシュートを6本放ち、その全てで得点した
  • イングランドが後半の追加時間に失点したのは、W杯で史上初。ミナのゴールは、後半47分33秒に生まれた
  • イングランドはW杯決勝トーナメントで戦った直近15試合のうち8試合で延長戦に突入している。決勝トーナメントで初めて延長戦を戦ったのは、自国開催となった1966年イングランドW杯の決勝戦だった

(英語記事 England beat Colombia on penalties

提供元:https://www.bbc.com/japanese/44706685

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